FILL THE WORLD with DEMENTIA-FRIENDLY COMMUNITIES
TOYOTA FOUNDATION RESEARCH PROJECT
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■台湾における認知症と地域共生社会の先進モデル
地域の健康ケアのパートナーになりたい
――耆樂股份有限公司 陳柔謙
家でも外でも安心してみんなが過ごせる
私は台湾在宅医療学会の理事をしており、地域におけるさまざまなケアにもかかわりをもっています。現在は耆樂股份有限公司という会社の責任者もしています。その会社の経営理念は「地域の健康ケアのパートナーになりたい」で、地域で健康を促進する、認知症や自立できなくなる事態を予防することです。
業務は、①健康用品や健康関係のコンサルティング、②地域の健康促進や相談室の運営(地域の保健室)、③在宅サービスや介護の教育――の3つです。
このうち地域の保健室では、どこにいても安心してみんなが過ごせることを目指しており、そのために、いろいろな取り組みをしてきました。たとえば、医療センターや地方の診療所、薬局や治療所、NPOなどとのネットワーク化に取り組み、地域で200以上のいろいろな規模のイベントを行ってきました。住民と高齢者がかかわりをもつことも目標としており、スポーツや運動、美術関係、紙芝居や音楽、栄養関係などさまざまなイベントを行っています。
運動をテーマにしたイベントで印象深い患者さんがいます。パーキンソン病を患っていて、少しうつの気もある患者さんでした。そのために最初はご主人に車椅子を押してもらって参加されました。立ち上がったり、運動をしたりできませんでしたが、「座ったままでも構いませんので、是非参加して下さい」と声をかけていきました。その結果、何と7週目には、立ち上がって一緒に運動をできるようになったのです。
「一緒に練習しましょう」という雰囲気ができた
中等症あるいは重度の認知症の人が一緒に音楽を楽しむことで、笑うことがなくなってしまった人が、一緒に手を叩いたり、笑ったりするようになったこともあります。またオカリナの練習が、口の周りやデンタルのトレーニングにもなり、デンタル関係の疾患の予防や心肺機能の向上につながりました。
5週間ほど一緒に練習したことで達成感も得られたようで、友だちを誘って「一緒にやりましょう」というところまできました。最初は7人でしたが、最終的には18人の仲間ができました。
地域の保健室ではランチの集いもしました。自分の住まいの近くの高齢者に最初はシンプルに「一緒にごはんを食べてくれませんか」と声をかけて、一緒に持ち寄りでごはんを食べ始めたところ、「とても楽しい」との声が挙がり、今度は高齢者が「ランチの会を開くので、あなたも一緒に来て」と誘ってくれるようになりました。その後、自分たちでお金を集めて、自分たちで作るという巡回型のランチ会(高齢者宅または保健室にて)も行なっています。
そのほかアロマ教室のようなリラックスできるイベントも行っています。集まって一緒に香りをかいだりしているうちに、笑顔が出てくることもあります。親子で参加をしているケースもあります。認知症の母親に自分の愛情を伝えたりしながら1カ月から2カ月、結局その親御さんは亡くなられましたが、お互いにリラックスをしたり、感情を交流し合ったりできた場所にもなりました。
また、紙芝居も行ないました。台湾は日本の影響があり、80歳以上の高齢者は紙芝居になじみがあります。日本統治時代を思い出したのか、互いに日本語で会話を始めたり幼い頃の思い出を語り合ったりというふうになりました。
「人とつながりながら一緒にやる」という意識が弱かった
台湾で特徴的な新しいサービスを立ち上げようとしても、さまざまな規制があり、政府からの資金的支援がなかなか得られません。ですので、特徴的な新しい取り組みを行う場合は自分で資金を集めなくてはなりません。
また、地域における長期的ケアという意味では、さまざまなつながりが重要ですが、今の政府内部はそのような統合、コミュニケーションをうまく図れていないところがあります。
つまり、健康保険部門と社会福祉部門に「互いに一緒にやろう」というモチベーションが出てこない。しかし、私たちは高齢化社会に直面しているわけですから、生活は大きく変わってきています。政府の内部では部門が違うかもしれないが、一緒になってやるというモチベーションが重要です。
10年間やってきましたが、「人とつながりながら一緒にやる」という意識は弱かったと言えるかもしれません。今後は教育にもっと力を入れるべきであり、さらにリソースをネットワーク化するためには地域で高齢者そのものの力や意識を高めることも必要だと思います。
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