〈コンセプト・特色〉
「認知症になっても安心して幸せに暮らせるまちづくり」を実現するために主体的に行動できる人材の育成とソーシャルイノベーション
〈概要〉
「小松市認知症ケアコミュニティマイスター養成事業」は、NPO法人いのちにやさしいまちづくりぽぽぽねっとが石川県小松市から委託を受けて行っています。1年間をかけ1回/月のペースで9日間、認知症と脳科学、フィジカルアセスメント、認知症の人や介護者への理解、日常生活、食事、排泄、栄養・歯科、薬、意思決定支援、コミュニティケア、聞き書き、認知症当事者とつくる地域文化、アクションプラン(立案・実行・評価・発表)について学び、課題を提出します。
受講生は、地域包括支援センター・介護保険施設・病院やクリニックなどに勤務する医療保健福祉職と、民生委員、健康推進員、企業の職員等です。修了生は小松市長寿介護課を窓口とする「マイスターの会」に入会します。マイスターネットワークを通じて、新しいアクションが生まれています。
〈運営主体〉
NPO法人いのちにやさしいまちづくりぽぽぽねっと
〈取り組みをスタートした時期〉
2015年4月
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
「認知症ケアコミュニティマイスター事業」は、2015年は石川県高度医療人材育成事業の補助金にチームをつくって応募し、採択されて実施しました。その年の認知症ほっとけんサミットや、認知症アクションプラン発表会をきっかけに、2016年からは小松市からの委託事業になり、現在の取り組みとなりました。
そのアクションのひとつとして取り組んだのが、ことぶきカフェ(認知症カフェ、運営:コミュニティスペースややのいえ)です。受講生のアクションが、小さいけれども小松市を変えていくエネルギーとなっていること、マイスターが主体的に活動できるマイスターの会ができたことで、持続継続性のある事業となっています。
〈運営コスト〉
2015年/石川県高度医療人材育成事業の補助金での運営2016年~/小松市の委託事業として運営
〈運営に必要な費用概算〉
■認知症ケアコミュニティマイスター(事業10万円/月)■ことぶきカフェ(1万円/月)■暮らしの保健室(1万5000円/月)
〈運営資金の確保〉
自治体予算、ことぶきカフェ(昼食代1000円は実費、人件費は持ち出し)、暮らしの保健室(人件費持ち出し)
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
認知症ケアコミュニティマイスター養成講座の受講生を確保するために、講座の認知度を高め、信頼を得ていくには、受講された方々が受講後も楽しく活動が継続できる場が必要と考えていました。マイスターの会をつくるまでの前向きな人材と出会うまでに時間を要しました。
コロナ感染症の拡大で対面での講義ができなくなり、Web開催に切り替えるときも、会場の設営や機器の購入などに苦慮しましたが、得意なスタッフが入職し、対応できました。
ことぶきカフェは、コロナ感染症の拡大で2020年の3月から6月まで休みましたが、その間に入院・入所となられた方がいらして、通所介護ではない、人として出会えるなじみの場の必要性を改めて感じました。7月から、持ち出しで感染予防対策とソーシャルディスタンスを保つ環境を整備し、再開しています。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
認知症ケアコミュニティマイスター講座は、顔の見える連携が進むきっかけとなり、地域まるごとケアの仲間づくりができたことを受講生たちが喜んでくれました。ことぶきカフェは、「認知症開放宣言」のカフェとして、認知症になっても安心して過ごせる場所となっています。さらに認知症の人だけでなく、家族もその人らしく過ごせる場所として活用されています。
暮らしの保健室では毎週水曜日に、うんちの保健室を開催しています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
次世代の認知症ケアコミュニティマイスター養成講座のマネジメントができる人材を育てていく必要があると考えています。地域で自己発生的に生まれたアクションプランを事業化していくことができる人材も、同時に育てていく必要があります。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
講座は、「とことん当事者」「人として出会う」「自分ごととして考える」「“十位一体”のネットワーク」をベースに企画しています。人材育成と育成後のソーシャルイノベーションを双方向に支え合える、人として出会い、語り合い、ともに行動できる仲間づくりを意識的に行っています。
〈今後のビジョン〉
認知症ケアコミュニティマイスターは、認知症だけでなく、さまざまな地域課題に対応できる人材です。誕生から最期の日まで、0歳から100歳までの地域まるごとケアの担い手を育成していきたいです。
2021年度は、マイスターの会の仲間たちが協力して、認知症の方の当事者会を開設します。養成講座は、認知症の方の就労をテーマに行います。また、暮らしの保健室のネットワーク化を図るため、NPO法人の事業に位置付けることにいたしました。
これからも多様な当事者と家族とともに、当事者や家族の声からソーシャルイノベーションを行い、「ないものはつくる」という姿勢で新しい仕組みをつくっていきます。
■事業名:小松市認知症ケアコミュニティマイスター養成事業
■事業者名:NPO法人いのちにやさしいまちづくりぽぽぽねっと
■取材協力者名:榊原 千秋(NPO法人いのちにやさしいまちづくりぽぽぽねっと代表)
■事業所住所:〒923-0945 石川県小松市末広町88番地