〈コンセプト・特色〉
こどもからお年寄りまでのワンダーランド(世代や障害を問わず誰もが実現できる世界)
〈概要〉
かなえるデイサービスまるは、弊社独自の自立支援システム「セルフデザイン事業」(4つのキーワード「お仕事」「健康と美」「趣味活動」「生活」をもって誰かがサポートすることで実現する、社会的自立)を活用しています。
活動内容は、1カ月のカレンダーに、3つのキーワード(「お仕事」「健康と美」「趣味活動」)の行事を日替わりで入れ込みます。「お仕事」での農業や山菜取り、「健康と美」でのヨガやフェイシャルエステ、「趣味活動」での日帰り温泉や季節の果物収穫・屋形船での宴会等です。その他、毎日買い物サービスを提供することで、食生活の維持を実現していります。4つのキーワードによって、サポーターがいることで元気な時と変わらない生活を実現するだけでなく、できることに焦点を当てることで利用者が発信するサービスの実現へと繋がっています。
〈運営主体〉
「株式会社池田介護研究所」 2015年に創業、翌年、かなえるデイサービスまるをオープンしました。2019年9月、お弁当屋と共生型通所介護をミックスした無添加お弁当二重まる一番町をオープン、翌8月同建物内に二重まるカフェをオープンしています。同年12月、健康と美容に特化した半日型デイサービスであるウエルネスサロン キャトルフィユをオープンしています。
その他、かなえるデイサービスまるの休日(土曜日)を活用し、子ども食堂を中心としたまんまるカフェ、まるの地域集会所で介護予防教室を行う、まんまるファクトリーの非営利活動を行っています。
すべての事業に関して、独自の自立支援システム「セルフデザイン事業」を活用しています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2016年5月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
かなえるデイサービスまるは、2016年5月オープン時より農業を行ってきました。翌年、だいこんをつくると、100本ぐらい収穫できました。その時、利用者から「100本食べるのは大変だから、漬物にしていい?」との声がありました。そして、できた漬物が絶品だったため、別の利用者から、「これ、売りに行けば?」との発言がポロリ。これが、漬物を販売するきっかけとなりました。翌年、保健所から加工業の許可をとり、知人から真空機をお借りし、漬物を商品として販売する準備ができました。
また、かなえるデイサービスまるでは、創業時よりデイサービス旅行を毎年実施してきました。漬物(ぬか漬けと醤油漬け)と業務委託した味噌ができた際には、デイサービス旅行と掛け合わせ、これら商品を、利用者が東京で販売する「東京行商ツアー」へと結びつきました。行商ツアーは利用者にとって1年の目標となり、人生の最後まで目標を実現させる共生社会が実現しています。
〈運営コスト〉
弊社の運営資金は、デイサービス3店舗と居宅介護支援事業所を中心とした介護保険事業からの収入となります。その他、かなえるデイサービスまるにおける漬物及び味噌の販売費、添加お弁当二重まる一番町における弁当販売費及びカフェでの販売費、トラベルヘルパーが付きそう介護旅行代金、まんまるカフェでの参加費、まんまるカフェでのイベント出店での販売費等です。
今後、介護保険外事業を拡大することで、公費に依存しない、新しいビジネスモデルを目指しています。
〈運営に必要な費用概算〉
550万円/月
〈運営資金の確保〉
自費、介護保険、お弁当や漬物・味噌の販売
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
起業時、それまで事業の実績がなかったため、資金繰りでは大変苦労しました。しかし、青森県が主催するビジネスプランコンテスト最優秀賞で風向きは変わりました。その後は、行政からの強力なバックアップやさまざまな機関との連携で、不安が払拭され安心を得られました。それからも、介護保険法改正での地域密着型デイサービスへの収入減少では、利用者定員を10名から18名に上げることで改善しました。紆余曲折ありながらも現在の状況に辿り着きました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
かなえるデイサービスまるは、地域との関わりを大切に歩んできました。サービス内容も、利用者自身の心に秘めた思いに焦点をあて、利用者が活動したいことや今まで培ってきたことを、職員がサポートして活動してきました。
特に、セルフデザインの「お仕事」では、農業で収穫した大根を加工した漬物や、畑で取れた大豆を業者に納品してつくった味噌を東京で販売する「東京行商ツアー」を行っています。これは、本人が人生の最後まで自分らしい日常を送ることを実現させています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
現在、2つの険しい問題と向き合っています。1つは、漬物の加工についてです。漬物加工の問題点は、農業での大根づくりと漬物の加工が、気候に大きく左右されることです。
そして、もう一点は安定供給の難しさです。利用者と職員が共同でつくっているので、利用者の予定が合わないことや職員の業務が優先されることが多く、加工作業に割ける時間が少ないことが問題です。今後、6次産業化専属の職員を配置して、改善できればと思っています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
今年度より、施設に隣接している農地を借りることができました。そのため、今まで20分かけて向かっていた農地への移動時間が短縮されました。そして、農地にトイレがないことで参加に抵抗のあった利用者も、参加できるようになりました。今まで、畑に興味がなかった利用者や、車酔いを心配していた利用者も参加しやすくなります。これからは、移動距離が短縮したことで、商品の完成度をあげていきたいと思います。
〈今後のビジョン〉
これからも、高齢者が病気や認知症になったとしても、最後まで自分らしくいられるよう、ご自身のできることをサポートし、社会参加できる環境をつくっていきます。それは、福祉事業にとどまらず、さまざまな企業とのコラボで実現する「福祉×〇〇=未来産業」の創出に繋がります。高齢者は社会の宝であり、社会の未来でもあります。そのため、障がいがあってもできる仕事、できる仕事時間を明確に精査して、いつまでも高齢者が輝ける社会に繋げ、100年後の子どもたちがいつまでも追いかける背中であり続けることを目指します。
参考(認知症フォーラム.comで紹介された「働く 稼ぐ 楽しむ 〜かなえるデイサービスまるの行商ツアー〜」) https://www.ninchisho-forum.com/movie/n-081_01.html?fbclid=IwAR2gc23HCKSZatJRKTLo7upWS6tNt5amoVc-4i1DjnpdPyG-4obrYvgYTKI
■事業名:かなえるデイサービスまる(デイサービス利用者が発信する新たな産業革命)
■事業者名:株式会社池田介護研究所
■取材協力者名:池田 右文(株式会社池田介護研究所代表)
■事業所住所:〒039-1103 青森県八戸市大字長苗代字内舟渡73-3