〈コンセプト・特色〉
地域商店街と高齢者のハブを担い、互いの課題解決を図り、住み慣れた地域で安心して生活できるまちづくり支援
〈取り組みの概要〉
【取り組みの規模と具体的な課題解決内容】
・商店街および地域の課題解決策
「空き店舗」を活用した地域密着型通所介護に通う高齢者と共に、商店街および地域が抱える課題を解決し、交流の場を担い、交流から顔見知りを少なくし、不安や課題を解決します。具体的には、商店街のお弁当屋のオーダー用紙づくり(折る、切る作業)、電気屋さんの領収書づくり(スタンプ押印)、近隣ジムの装飾(紙花の制作)などを社会貢献活動として請け負い、成果物を高齢者の方々と一緒に持ち込むことで顔見知りとなり、挨拶・会話を派生させています。
・高齢者の課題解決策
「会話」が飛び交い、商店が立ち並び「外出」しやすく、買い物などの「社会参加」ができる商店街へ出向くことで、高齢になってもよい健康状態を維持することです。具体的には、商店街を単純に散歩するのではなく、いたばし区ボランティアセンターからご依頼を受けた「情報誌お届け隊」として地域に情報誌をお届けするという役割をもったうえで、地域の方々に冊子を手渡し、会話や交流、時には買い物などを促しています。
〈運営主体について〉
「(非営利型)一般社団法人日本福祉環境整備機構」
■代表理事 太田 浩史(介護職員/社会福祉士など)
ストレングス・ファインダー:ポジティブ/最上志向/コミュニケーション/着想/社交性
■理事 棚田 章弘(弁護士)
■理事 早坂 靖広(株式会社AMICUS 取締役)
■理事 中里 芳浩(施設長/介護福祉士など)
ストレングス・ファインダー:ポジティブ/成長促進/回復志向/調和性/適応性
■森近 恵梨子(介護主任・生活相談員/介護支援専門員など)
ストレングス・ファインダー:着想/戦略性/学習欲/最上志向/個別化
ニューヨーク生まれ、上智大学大学院修士課程修了。多世代のボランティアさんたちと一緒に活動し、おもしろい場をつくることを楽しみにしています!趣味はカラオケ、絵を描く、動画編集、研究
■平岩 なつみ(カフェ店員・介護職員)
金沢大学地域創造学類福祉マネジメントコース卒。「福祉KtoY」代表。福祉の魅力発信、イメージアップ活動を行う。第3回全国学生団体総選挙でダイバーシティ部門グランプリ受賞。
■山中 緑(看護職員/看護師・保健師・助産師など)
宮崎県立看護大学看護学部看護学科卒業
〈取り組みをスタートした時期〉
2020年6月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
取り組みをスタートしたきっかけは、当時東京都板橋区において、地域密着型通所介護を増やしていく計画があり、区民や地域の方々に必要とされていると感じたためです。また、日本における商店街、高齢者には、下記のような課題がありました。それぞれの課題に対し、相互に課題解決ができるのではないかと考えたため、取り組みをスタートしました。
【具体的な商店街・地域の課題】
■商店街が抱える課題
・商店街利用客と子育てママが、コミュニケーションを図る場所がない
・人材・資金を十分に確保できないため、発展させることが難しい
■地域が抱える課題
●交流
・大人と子どもなど世代や職種を超えた地域住民同士が交流する場がない
●イベント
・演奏会など音楽や芸能に触れる場が少ない
●暮らしやすい町・安心安全
・買い物したり、遊んだりするなど子どもと一緒に楽しめる場所が少ない
・顔見知りが少なく、子ども一人で町を歩かせることに不安がある
→上記の課題に対し、高齢者施設にて解決できることがあると考えました。
【高齢者の課題】
高齢化する商店街に属する経営者やその家族、地域住民が商店街や住み慣れた地域で生活していくためには、よい健康状態を維持する必要があります。高齢者がよい健康状態を維持するための課題要因は、以下の3つです。
■外出頻度が少なくなる
健康状態が「よくない」人では、「ほとんど毎日」外出する者は約3割にとどまり、「ほとんど外出しない」という者が23.0%、週に1回未満しか外出しない者の合計は約3割となっている
■会話頻度が少なくなる
健康状態が「よい」人では、「ほとんど会話をしない」が1.1%と極めて低いのに対し、健康状態が「よくない」人では13.1%となっている
■社会的な活動への参加が少なくなる
健康状態が「あまりよくない」は20.3%、「よくない」が11.5%である
→上記課題に対し、商店街が補完し高齢者を支える仕組みづくりがあるのではないかと考えました。
〈運営コスト〉
【資金調達と取り組み事例】
■令和元年東京都空き店舗活用モデル事業(上板南口銀座商店街振興組合)
空き店舗を活用し、地域課題の解決や商店街のにぎわい創出につながる先進的な取組を行う商店街を支援する事業
■独立行政法人福祉医療機構 子供の未来応援基金
コミュニティカフェ運営および無料総合相談窓口。健康相談から介護相談まで、必要があれば介護福祉士、社会福祉士、保健師、助産師、看護師、介護支援専門相談員、弁護士などの専門職につなぎ、専門的なサポートをする事業運営
■NPO法人まちぽっと 草の根市民・ぐらん
無料総合相談窓口をリモートで実施するための備品購入および環境整備
■大和証券財団 市民活動助成(ボランティア団体Arch)
活動拠点となるキーステーションで必要な環境整備および備品の購入
■2020年度公益信託土肥記念高齢者福祉基金(ボランティア団体Arch)
水耕栽培や観葉植物を高齢者の方々と共に水やりや成長過程を楽しむための備品購入等
■板橋区公募事業 NPO・ボランティア助成(ボランティア団体Arch)
ボランティア団体Archが活動拠点とするキーステーションのオープニングイベント実施
■サロンArch(ボランティア団体Arch)
毎週水曜日14時から15時に地域シニア世代の方々と茶話会・健康体操などを実施
〈運営に必要な費用概算〉
144万円/月
〈運営資金の確保〉
自費
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
2020年6月1日の開設に向け、着々と準備をしている中、新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言が発出されました。開設前に、地域住民の方々やステークホルダーに対し、対面でごあいさつさせていただく予定でしたが、準備時期から予定が崩れるかたちとなりました。
もともと、「人とひととの触れ合いや交流」をコンセプトにしていたため、交流会、こども食堂の実施は延期となり、さらに、デイサービスでクラスターなる集団感染が発生したことがメディアで流れたことから、経営に関しても窮地に立たされることとなりました。
私たちができることに特別なことはなく、マスク・手洗い・うがい・指手消毒・人との距離を保つなど、世間一般で言われていることを、とにかく「徹底」しました。
そんな中、地域包括支援センターの方々が私たちの取り組みを口コミで伝えて下さり、介護業界に対して感染症予防対策の物資を支援して下さる団体などの協力もあり、「皆で協力して乗り切る」という心の支えもあり、今まで乗り切れることができました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
地域密着型通所介護は、拠点となる区が対象となりますが、対象となる板橋区内の2つのエリアから口コミが派生し、「知り合いから噂を聞いているので取り組みを知っています」と認知度が向上していくことを体感できました。
介護業界従事者の知人から噂を聞き紹介していただけるケースのほか、キーステーションを利用されているお客様からの紹介を受けるケースもあり、少なからず私たちがやっている意義を感じられることもあります。また、過大評価であると受け止めていますが、お客様から「天国みたい」「竜宮城のようだ」とのお言葉をいただいたときには、やってよかったと感じます。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
新型コロナウイルス感染症が、いつ終息するのか目処が立たないため、今後のイベントや企画の予定が立てにくい点に、悩みを抱えています。うまくいっていないことや課題も山積していますが、私たちのような駆け出しのデイサービスの段階として、いかに前に突き進んでいくかが大切であると考えています。
収益課題、スタッフのオペレーション、備品や環境整備の不備不足など、具体的な一つひとつの課題に対して悩むとき、まずは「目の前を支えてくれているスタッフ、ボランティアメンバー、お客様およびステークホルダーの方々」に心から感謝することで、客観的な視野をもちつつ、多くの課題を一つずつ解決できると考えています。
〈持続させるための仕組み、工夫〉
介護業界や通所介護事業、特に地域密着型通所介護は属人的な部分が多いと考えています。まちづくり支援や事業運営を継続させる仕組みとして、いわゆる仕事ができる人材よりも、まずは本当に「人想い」であるスタッフやメンバーの確保が必要であると考えます。
また、人が人を呼び、大きな支えとなっているため、特に「人のために役立つ何かがしたい」と考え実行していただいているボランティアメンバーの皆様に「楽しいっ!!」と感じていただくことで助けてくださる人の輪が広がっていくと考えています。その上で、スタッフにも「楽しい」と感じていただくことで、離職防止・採用・教育への相乗効果が期待されると考えています。
〈今後のビジョン〉
今は少しずつ、地域でかかわりある方々の小さな困りごとや、商店街でのちょっとした課題に対し、ささやかながら課題解決をしています。これからお客様の人数が増えるにつれ、少し大き目な課題やボリュームある課題に対し、お客様とスタッフ、地域住民のボランティアメンバーの力を借りてチャレンジをしていきたいと考えています。
また、ゆくゆくは各地域に展開し、地域高齢者と商店街のハブとなる施設として求められるよう展開していきたいと考えています。最終的には、このスキームが世界に広がり、豊かな社会を支えるシステムとして活用される形になればと考えています。
■事業名:地域密着型通所介護&コミュニティカフェ
■事業者名:キーステーション
■取材協力者名:太田浩史(一般社団法人日本福祉環境整備機構代表理事)
■事業所住所:〒174-0076 東京都板橋区上板橋1-19-16 アソルティ上板橋2F キーステーション口