〈コンセプト・特色〉
共同生活
〈概要〉
定員35名のデイサービスを2店舗運営しております。やりがいや生きがいを少しでも実感してもらうため、そして介護保険法に則った事業のため自立支援に繋がるよう、そして、少しでもその方らしい生活を自宅でもデイサービスでも営んでいただけるよう支援しています。
具体的な取り組みとしては、毎日の調理作業を利用者さんとスタッフが共同で行ったり、畑作業や大工仕事、地域清掃や内職、幼稚園でのボランティア、地域での清掃ボランティア、内職などから利用者さんに参加活動を選んでいただいたりして過ごしていただいています。畑で収穫された野菜を地域のレストランに卸したり、一般販売したりしています。また、地域の製材所から廃材をもらい、家具や積み木を制作し販売や幼稚園に寄贈しています。
利用されている方の98%は認知症を患っておられますが、大きな怪我や問題もなく5年間運営しています。活動の合間を縫って入浴もされています。個別機能訓練も実施し、加算をいただいています。目標も、「“歩いて”フランス料理を食べに行く」「電車に乗って以前の職場に行きたい」など、バラエティに飛んだ設定となっており、スタッフと一丸となって機能訓練にも取り組んでおられます。
〈運営主体〉
株式会社おおきに
〈取り組みをスタートした時期〉
2016年4月
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
私は高校卒業後、当時ヘルパー1級の資格を取得できた専門学校に1年間通い、その後ずっと介護の仕事に就いていました。在宅に関わる仕事から、病院、施設までいろいろな業種を経験しました。
老人ホームに勤務している時に、ふと「自分は将来このような生活がしたいのだろうか? 自分の親だったらどうだろう」と考えることがありました。その時から独立を意識するようになり、就業中の会社でも取り組めることは何かないかと試行錯誤していましたが、組織の中で思いを全て実現することは難しく、想いをカタチにしたいという思いで取り組みと起業を同時スタートしました。
〈運営コスト〉
少しの資本金と日本政策金融公庫、銀行からの融資で起業しました。現在の運営資金は、介護報酬及び利用者さんの負担分ですべてを賄っています。しかし、介護保険に頼らない運営資金の調達が急務だとも考えていますので、2020年より別事業も検討・試運転を始めています。
時代の流れに伴い国の方針・施策も変わってきていますので、随時情報収集を行い、臨機応変に対応できる会社でありたいと思っています。
〈運営に必要な費用概算〉
2店舗で約800〜900万円/月
〈運営資金の確保〉
自費、介護保険
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
開設当初が一番苦労しました。まだまだ積極的に地域活動ができておらず、その他のプログラムの認知度も世間一般的に低かったこともあり、ケアマネジャーや相談員さんからの反応があまりよくなく、紹介いただけなかったという点で当初運営面が厳しかったように思います。
採用スタッフがなかなか馴染まない時期もありましたが、口コミで地域の方からの問い合わせが増え、利用者さんの増加につながりました。また、スタッフも、紹介やSNSを通した応募があり、乗り越えることができています。地域の地元企業に関しては、特に問題なくスムーズに連携させていただくことができました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
現場への権限譲渡を推進し、現場決済の基準を見直しています。今までよりもスピーディーに、そして臨機応変に対応できているように思います。その場その場での判断ができることにより、利用されている方の希望に添えているように思います。立ち上げた際の拘り、自分自身のこだわりをできるだけそぎ落とし、法人としての理念を理解さえしてもらえれば、あとは口出しをできるだけしないよう我慢しています。現在中核を担う若手も、責任感をもって業務に当たってくれていますので、デイサービスの業務は円滑に回っているように思っています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
地域との連携については、イベント時だけではなく、日常生活の中で関われるよう働きかけています。そのようにすることで、顔の見える関係性を築き、自然な形で連携を継続させています。役職者だけではなく、パートスタッフまで関われるようにし、どんな人が働いている地域と関わっているのか、理解していただくよう心がけています。
業務に関しては、責任の所在は明確にしますが、私自身も含む管理者や相談員も、全て自分でやり過ぎない・抱え込まないよう注意しています。ある程度業務を共有することによって、それぞれの仕事内容の把握と協力し合える体制を構築しています。
また、スタッフ間でも携帯アプリのインカムをはじめIT・ICTを導入し、情報のスピーディーな共有、連携を図るようにしています。目の前の利用者さんの希望や活動内容なども、随時連絡を取り合いながら、ストレスなく業務に当たってもらうようにしています。
〈今後のビジョン〉
地域共生社会については、現在言葉が先行しているように思います。言葉通り「共生社会」を目的としてつくり上げるのではなく、自然な形で混ぜ合うことができればと考えています。その自然なカタチとして考えているのが「労働」です。生きがいや、やりがいを感じながら、それぞれが輝ける瞬間を、それぞれが受け入れられる余裕のある地域を目指して活動をしていきたいと思っています。
今まで、高齢者は介護施設に、障がい者は福祉施設にと、地域社会から切り離された状態で過ごしておられたように思います。今までの歴史があるので一朝一夕にはできませんし、いきなり始めてもお互い不利益が出ると思いますので、少しずつ違和感なく交流できる地域づくりを提案してきたいと思っています。
■事業名:デイサービスおたがいさん
■事業者名:株式会社おおきに
■取材協力者名:太田 悠貴(株式会社おおきに代表)
■事業所住所:〒633-0051 奈良県桜井市河西775