〈コンセプト・特色〉
あるといいながあるところ。
〈概要〉
青森県十和田市というところで、「あなたの“ふつう”を考える」をコンセプトにした「小規模多機能ホームくらしの家」を運営し、型にはまらない一人ひとりに合わせたケアとごちゃまぜの地域づくりを行っています。
小規模多機能ホームの中には「地域交流スペースくらっち」が併設されており、地元の人が気軽に出入りできる仕組みとなっているため、放課後、近所の小学生が「ただいま!」とやって来て宿題をしたりしています。高校生も勉強しに来たり、ときには施設の利用者と一緒に折り紙をしたり、学校が休みのときには、お昼ご飯の調理を手伝ったりするような交流もあります。また、子連れでの出勤もできる職場なので、職員の子どもと利用者が一緒に過ごし交流することもあります。地域の皆さんとバーベーキューをしたり、お食事会をしたり、みんなでワイワイつくりながら食卓を囲むことも多いです。
子どもも大人も高齢者もみんなごちゃまぜで、ご近所付き合いができるような地域づくりの活動を行っています。
〈運営主体〉
「合同会社くらしラボ」小規模多機能ホームのほかに、「くらしの居宅介護支援事業所」「オーダーメイドのデイサービスくらしっこ」「訪問介護くらすけっと」「生活支援サービスくらすけっと」を運営しており、主に介護保険を主体とした事業を行っています。
各事業所は一つの小学校区で展開されており、地元の人たちが豊かに暮らせるよう「半径1キロのヒーロー」を目指し、地元密着を主としています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2019年4月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
もともとは、居宅介護支援事業所のみを運営していました。利用者さんをさまざまな事業所に紹介する中で、もっと個別にやりたいことがあるのに事業所側の都合に合わせなければならないことが多かったり、世間から切り離されたような印象があったりしました。もっとその人の要望に合わせた支援を行いたい、介護が必要になっても同じように地域の一員として暮らしていくことをサポートしていきたい、と思ったのがきっかけです。
〈運営コスト〉
基本的に介護保険事業としての収益がありますので、その資金を保険外での活動費に当てています。みんなでお食事会をするときも割り勘で、保険外の活動ではさほどコストというコストはかかっていません。
事業の継続については、あえて計画的に行事として行ったりせず、地域との人たちとの雑談から生まれたものや、意見をいただいて始まることがほとんどです。そういった、“町内の一員”というかたちで地元の人たちと繋がっていくことが、継続していくことの一つのポイントのような気がします。
〈運営に必要な費用概算〉
300〜500万円/月
〈運営資金の確保〉
自費、介護保険
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
地域交流スペースを作ったものの、当然認知度などある訳はなく、周辺の人たちも、「大きい建物ができたけど、ここは一体なんだろう」と怪訝そうな感じで覗きに来ることが最初は続いていました。ただ場所をつくって待っていても、人は来ないなと(当然ですが)。最初は、どうやって地域に開いていくかという点で苦労しました。
民生委員さんや学校の校長先生のところに行って施設の内容や機能を説明するなど、面倒くさがらずにいろいろな所に出向いて説明の機会をもらい、少しずつ理解が進んできて今があると思います。それができたのは、一緒に目的を共有して奔走してくれたスタッフが居てくれたからです。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
「あなたの”ふつう”を考える」のコンセプトの通り、利用者さん一人ひとりのやりたいことが実現していってるのがとてもうれしいです。思い出の場所に出かけたり、食べたいときに食べたいものを食べに行ったり、好きな服を着ておしゃれをしてみたり、その人が「こうしたい!」と思ったことが実現できて、利用者さんの笑顔が見られたときは、本当にやってよかったと思います。
また、地元の人との行き来が当たり前にあって、利用者が地域の一員として接することができています。要介護状態となってからも、社会と隔絶されることなく暮らすことができているので、いいなと思っています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
ここ最近の苦労といえば、やはり新型コロナウイルスの影響です。事業所が2019年にスタートし、一年かけて少しずつ地元の人たちとの繋がりができてきていました。小学生が来てくれたり、一人暮らしの人たちとお食事会をしていたところに新型コロナウイルスが流行し、そのつながりが遮断されてしまいました。
事業所への出入りを制限したため、なるべくこちらから出向くかたちで地元の人たちとのつながりを維持して来ていますが、今後も含め、どのような体制で交流を続けていけばよいかは、課題だと感じています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
持続させるためにいま意識しているのは、あえて「ゆるめにやる」ということでしょうか。肩肘を張らずに大変なときは無理にがんばらず、いいなと思ったことはやってみる。シンプルですが、とても大切なことのように思います。担当者を決め、計画をつくって進めたときより、今のスタイルの方がうまく行っているような気がします。
あとはチームワークを大事にするのが重要だと思います。一人ひとりに合わせたケアも、ごちゃまぜの地域活動も、1人ではできませんので、職員も利用者も地域の人も、いろんな人がいろんな「役割」で力を発揮できる環境をつくっていくことが必要だと感じています。
〈今後のビジョン〉
昔あったような銭湯や商店など、人が集まれるコンテンツをつくってみたいと思っています。昔、僕の地元の近所には銭湯があって、行くといつもどこかで見た顔があり、子どもからお年寄りまでワイワイと集まっていたのを覚えています。誰でも気軽に集まることができる銭湯のなかに、子どもを遊ばせる場所や、風呂上がりに地域の人たちが一杯飲める食堂など、みんなで団欒できるような場所がつくれたらと思います。
誰が介護を必要としていて、誰がそうでないのかわからないくらい色々な人が、ごちゃまぜに過ごせる、そんなコンテンツをつくれたらいいなと思っています。
■事業名:小規模多機能ホームくらしの家■事業者名:合同会社くらしラボ■取材協力者名:橘 友博(合同会社くらしラボ代表) ■事業所住所:〒034-0091 青森県十和田市西11番町3-20 ■サイト:https://kurashilabo.co.jp