〈コンセプト・特色〉
交通機関の安全活用で、認知症になっても安心して外出ができる社会をつくる
〈運営主体について〉
一般社団法人認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)は2013年より認知症にやさしいまちづくりをビジョンに掲げるネットワーク団体であり、当事者をはじめ、行政や企業、NPO、専門職などの有志メンバーが参加しています。メンバーがそれぞれ関心あるプロジェクトを立ち上げ活動を行っています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2015年11月30日
〈概要〉
認知症になると、外出が社会的に大きく制限されます。確かに困難に感じる点や不安な面もあります。だからといって一律に外出制限をするのではなく、本人や地域の課題に対して、どのようにしたら外出することができるか、「認知症になってもこれまでと変わらず社会生活を楽しめるか」について検討をしていきます。
〈取り組みのきっかけ〉
愛知県大府市で2007年認知症の男性が徘徊中に列車にはねられて死亡した事故が発生しました。
鉄道事業者であるJR東海が家族に約720万円の損害賠償を求めた裁判の最高裁判決が出るに際して、判決がどうなろうとも認知症の方々を自宅や施設に閉じ込めてさえいれば、ただ安全だというのは、認知症ではない健常者の勝手な思い込みで、社会の進むべき道ではないと考える仲間が集まって議論を進めていました。
一方では、判決を前に認知症の方の外出に対して責任論が語られるなど否定的な風潮がありましたが、軽度の当事者の方は当然外出しているし、交通事業者の方も認知症と思われる方へのサポートに苦慮していることがわかりました。そこで認知症を自分事と考え、認知症フレンドリーな交通のあり方について考えるプロジェクトをスタートしました。
〈運営コスト〉
勉強会やワークショップ、調査に関しては、助成金などを活用してきました。基本的にはミーティングを中心に行っており、関係スタッフの会議室などを活用させていただきました。調査の実施には助成金の申請などを行っています。
〈運営に必要な費用概算〉
0円
〈運営資金の確保〉
助成金
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
多くの当事者や支援者との対話を通して、「認知症になっても外出をあきらめない」「安全に外出できる社会をデザインする」ことを問いとして掲げました。
認知症フレンドリージャパン・サミット(DFJS) で毎年全国の仲間と一堂に会して議論することで、認識や課題を共有してきました。各地域のプロジェクトが相互補完を行いつつ進行していきました。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
次のように活動を途切れず実施してきたことが、周りの困りごとからの協力要請も生み、ネットワークをつなげてきました。
2016年2月 当事者ヒアリングセッション
2016年3月 交通機関利用のまとめ
2016年6月 エコモ(公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団)「認知症者の交通機関対応マニュアル作成ワーキング」メンバー
2016年9月 DFJsummit 2016「認知症にやさしい交通の指標」セッション
2016年10月 東広島市バス会社への認知症サポーター養成講座調査
2016年12月 京都市岩倉地区でのSOSネットワーク訓練参加
2017年2月 金沢市「やさしい街のデザイン塾〜認知症の課題を行政・企業・市民の立場で考える〜」発表
2017年2月 伊勢原市「東海大学2016年度認知症研修会 認知症と社会の在り方」発表
2017年4月ADI(国際アルツハイマー病協会)2017国際会議 ポスター発表
2017年4月DFJI交通プロジェクト・ワークショップ(京都)
2017年4月 国際セミナー「認知症にやさしい交通機関に向けて~スコットランドの事例~」(品川)
2017年9月 認知症フレンドリージャパン・サミット2017(DFJS2017) 認知症にやさしい交通アクションマップ作成
2017年10月 認知症になっても外出をあきらめないワークショップ
2018年7月~ 京都市交通局での認知症講座
2018年9月 叡山電鉄八瀬比叡山口駅にて駅カフェを実施
2018年9月 認知症フレンドリージャパン・サミット2018(DFJS2018) 川崎
2018年11月 まちだDサミット
2019年3月 高齢者が安心して電車やバスに乗れるように~交通機関と認知症シンポジウム~
2019年8月 交通機関で行う 認知症SOSネットワーク模擬訓練(東京・江戸川)
2020年2月『地域交通と認知症』国際セミナー
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
認知症の方々とともに外出して行動や困りごとを観察して理解できたことです。
また、東広島市の芸陽バスや京都市の京都バス、叡山電鉄、東急電鉄、JR九州の現場の方々と議論する中で、交通機関事業者の現場の方は非常に理解を示してくれました。事業者の方々のご家族にも認知症での悩みごとがあるなど自分事として考えてもらえました。認知症は特別のことではないと認識できました。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
これまでの活動から、普及と啓発が課題となっていて、全国各地との連携体制の構築が重要と認識しています。具体的には次の4つがあります。
①交通事業者の認知症に対する誤解を解き、認識をしていただく
②市民の当たり前の自然の協力を自分事に
③市民活動に協力
④研修の展開
材料は揃い、事業者、一般市民への理解を推進する必要があり、認知症サポートキャラバンメイト、交通事業者との連携、全国への発信が課題です。
〈今後のビジョン〉
認知症でも外出をあきらめないことをコンセプトに、当事者とともに安全な外出のあり方や社会とのつながり方について、各地域で対話を進めていく仕組みづくりをしていきたいと思います。
このプロジェクトでは、認知症の方の外出の実態調査やバス・鉄道会社などと連携し、より安全に安心して利用できる方法について探っていきます。踏切事故や自動車の運転事故が社会問題になっていますが、安全対策として免許返納や一人での外出の制限など必ずしも住みやすい環境になっているとはいえません。このプロジェクトでは、認知症になっても安全に外出ができる社会を目指して以下を推進していきます。
①当事者の困った場面の意見を集約する
②さまざまなセクターとともに解決方法を探る
③状況別のアイデア集を冊子にまとめる
■事業名:認知症にやさしい交通プロジェクト
■事業者名:一般社団法人認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)
■取材協力者名:松原淳(一般社団法人認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ「交通プロジェクト」メンバー)、前田亮一(同「交通プロジェクト」代表・連絡窓口)