〈コンセプト・特色〉
地域に愛される薬局へ
〈概要〉
自宅で療養中の方へ、薬剤師が訪問して薬剤を提供するサービスがあるのですが、非薬剤師が薬剤師と一緒に訪問します。その非薬剤師を育成する取り組みです。ボランチ制度と名付けて独自の取り組みとしています。薬局は全国のコンビニエンスストアより多く存在しています。薬局が地域のリソースとして、受動的ではなく能動的に地域に出ていく役割を担うことで、社会にとっても大きなインパクトになると思っています。その薬局に勤める医療事務を、地域に出ていくメディカルボランチとして育成し、専門職と家族を繋ぐ、患者さんと専門職を繋ぐ役割を担ってもらいます。
〈運営主体〉
「株式会社hitotofrom」
我々独自の取り組みです。ボランチとはポルトガル語でハンドルを意味し、舵取りや、コントロールするという意味をもっています。私が元サッカー選手だった経緯もあり、サッカーのポジションでも使われるボランチと名付けました。
〈取り組みをスタートした時期〉
2018年4月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
自宅で療養してる方へお薬を届けるサービスをしているときに、一人で訪問した女性薬剤師が患者家族に罵倒され、大泣きして薬局に帰ってきたことがキッカケでした。まず家にたどり着くまでに迷い、駐車場もわからず、時間通りに訪問できず、患者家族に罵倒されたのです。もちろん、事前に調べたりと、対処はあったと考えるのは当たり前ですが、地域に出ていきサービスをするにはさまざまなハードルがあることを感じました。そこから、二人体制での訪問を確立していきました。
〈運営コスト〉
薬局での利益が、運営のために必要な資金となります。持続可能にしていくために、非薬剤師への教育の仕組みを整えています。移動時間でのコスト削減に取り組んだりもしています。データをすべてクラウドで管理するなどして、外でも仕事に取り組めるような体制にしています。
〈運営資金の確保〉
介護保険、医療保険
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
ボランチ制度が新規雇用を生んでいるのですが、元々医療に関わってきていないメンバーが多いため、ベースを整えていくのが大変でした。日々、有志での勉強会などを開いたり、誰が見てもわかるようにシステムを整えたりなどしてきました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
患者さんのご自宅にうかがったときに、患者さんが警察に囲まれていました。ご自宅近くの量販店から、買い物カートをそのまま持ってきてしまったようでしたが、患者さんは、非薬剤師(ボランチ)と目が合ったときに安堵の表情を浮かべられました。患者さんとボランチで自宅に戻り、警察には薬剤師がしっかりと、患者さんが認知症であることなどを説明し、トラブルを回避することができました。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
ご自宅から外に出られない患者さんが多いのですが、その方たちを地域のコミュニティに繋げることに、まだしっかり取り組めていません。孤食などで悩む患者さんのために、ランチをご自宅で一緒に食べたりと、我々として少しでもやっていても、今はその時間はボランティアとなっています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
非薬剤師側(ボランチ)には管理栄養士がおり、薬だけでなく栄養の部分でのサポートを工夫しています。低栄養の患者さんを、MNA(簡易栄養状態評価表)を使ってアセスメントし、栄養補助食品などを提案したりもしています。持続可能にしていくために、社会保障費だけに頼らないモデルにしていく必要があると考えています。
〈今後のビジョン〉
全国の薬局に、ボランチ制度を導入して、薬局から薬剤師が地域に能動的に出ていくようにしていきたいです。ボランチ制度がデファクトスタンダードになって、縦割りの関係をなくし、地域に欠かせない人材の育成をし、地域まるごと病棟のような社会を実現したいですね。
■事業名:ボランチ制度
■事業者名:株式会社hitotofrom まんまる薬局
■取材協力者名:松岡 光洋(株式会社hitotofrom代表取締役)
■事業所住所:〒174-0076 東京都板橋区上板橋2-40-8 フレンディ上板橋1階
■サイト:https://hitofro.com/