〈コンセプト・特色〉
子連れ出勤や赤ちゃんボランティアによる多世代共生の高齢者介護事業
〈概要〉
事業所開始当初より、スタッフの子連れ出勤を推奨し、介護事業所で、高齢者だけでなく子どもが過ごすことが当たり前である多世代共生を狙いました。2018年6月より、独自に「赤ちゃんボランティア」をスタートしました。子連れの母親の居場所、社会参加の場となり、現在までに20組以上の親子が参加しています。他事業所でも同様の取り組みが行われるようになり、徐々に全国に広がっています。
〈運営主体〉
「合同会社MUKU」主に看護小規模多機能型居宅介護事業、訪問看護ステーションを営んでいる介護事業所です。利用者は平均20人で、スタッフも約20人です。スタッフの平均年齢は42歳で、全体の6割が子育て中の母親です。その多くが、未就学児を育てながら働いています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2017年4月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
介護が必要になった人の「普通の暮らし」を考えたときに、その環境に子どもたちがいたほうがおもしろいし、「普通の暮らし」に近づくと考えました。また、常にマンパワー不足といわれている状況を改善するために、子育て中の母親の力を生かせないかと考えていました。
当時、会社の代表である私も3人の子育て中で、母親の大変さもわかっていたので、母親が働きやすく、事業所にとってもよく、利用者にとってもよい方法を模索していたことが主なきっかけとなりました。
〈運営コスト〉
「赤ちゃんボランティア」に関しては、必要な運営資金はゼロです。有償ボランティアで行うなら、月1万円程度あれば問題ありません。事業として持続するためには、適宜ボランティア募集を呼びかけること、その様子をSNSやホームページで発信し、興味をもってもらうことが必要となります。
〈運営に必要な費用概算〉
0~1万円
〈運営資金の確保〉
自費、寄付、介護保険
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
子連れ出勤に関しては、開始当初のルールづくりや、スタッフの配置、仕事としての平等性などのすり合わせに時間を要しました。子どもがいると、作業的な仕事に時間がかかるようになり、余分な労力も必要になります。また、感染症などのリスクも高くなるため、今回のコロナのような感染症が発生した場合は持続が難しくなります。赤ちゃんボランティアに関しても同様です。
そこで、「子どもがいるからできない」と考えるのでなく、「子どもがいるからこそできる」と考えるように、思考をシフトチェンジしました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
子連れ出勤や赤ちゃんボランティアの母親に、「子どもたちの偏見がなくなる」「子どもたちにとってリアルな命の学びの場となる」と言ってもらえたことです。また、母親にとっても社会参加の場となり、大きな意味での子育て支援や地域共生社会の一助となっていると感じた時や、お年寄り、母親、子どもたちの笑顔が見られたときにやっていてよかったと思います。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
コロナにより、赤ちゃんボランティアを1年間休止していました。その間にボランティアたちの生活状況も変わり、仕事復帰などでボランティア卒業となったため、またゼロからのスタートとなってしまいました。感染症のリスクがあるなかでの継続に悩んでいます。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
SNS等での発信、講演に力を入れ、行政への協力依頼、新聞などのマスコミの取材による認知度の向上にも努めています。地域住民を巻き込むため、事業所内ではない町のカフェで「住民参加型会議」を開催しています。
コロナに関しては、状況をみながらその時々で対応していっています。
〈今後のビジョン〉
次の事業として、「未来と過去を往来する複合施設」を準備中です(2021年10月オープン予定)。未就学児、小学生を中心とした、発達障害がある子どもたちの通所と住宅型有料老人ホームを一体化させた複合施設で、外部から呼び込まなくても、自然に子どもと母親、地域住民が交流できるような場づくりを検討しています。
■事業名:子連れ出勤&赤ちゃんボランティア
■事業者名:合同会社MUKU
■取材協力者名:佐伯 美智子(合同会社MUKU代表)
■事業所住所:〒849-5103 佐賀県唐津市浜玉町大江49番地1
■サイト:http://muku-llc.com