〈コンセプト・特色〉
人とつながり まちを元気にする
〈概要〉
以下の3つの事業を組み合わせながら、Community Nurse Company株式会社がビジョンとして掲げる「誰もが誰かの心と身体の健康を応援できる」社会づくりを推進しています。
①コミュニティナースプロジェクト(育成講座)
全国で400名を超える研修修了生が誕生しています。コミュニティナースに興味がある人から、実践したい人、実践をステップアップさせたい人と、対象者別にコースを用意しています。
■3つの講座メニュー
・ベーシック講座(オンデマンド):コミュニティナースに関心のある方向け
・実践講座:すでに実践している、あるいはこれから実践する方向け。座学とフィールドワーク
・ステップアップ講座:さらに自身の活動を事業化したい研修修了生向け
②地域おせっかい会議
「みんなでコミュニティナースする」、1つのモデルです。「社会的健康(人とのつながり)」をつくるのは医療職だけではありません。まちの人みんなが、人とつながり、まちを元気にしている「コミュニティナース」でもあります。
地域おせっかい会議は、「みんなでコミュニティナースする」実践の場であり、「誰もが誰かの心と身体の健康を応援できる社会の実現」に向けた、まちづくりのモデルとなっています。市民の健康おせっかい活動を中心とした、喜びと健康を持続させる共生社会インフラとして、地域おせっかい会議というコミュニティを企画/運営しています。誰かの元気を思い、主体的におせっかいを焼きたいと思っている人の「発掘」「育成」を手掛け、実践を後押ししています。また、実践の先に生み出される、住民にとっての便益を可視化(評価)しています。「共に創り共に学ぶ」をコンセプトに据えた、Community Nurse Company株式会社(以下、CNC)コミュニティナースカンパニーの「発掘」「育成」拠点である雲南ラーニングセンター「みんなのお家」を解放し、各地にさまざまな実践を広げています。
- 一人ひとりの強みや得意を持ち寄って、みんなの力でまちを元気にすること
- 「おせっかいしたい人」が「おせっかいできる人」になれる場であること
- 互恵性:ケアをする・されるの関係でなく、お互いに与え合う「互恵的な関係性」が生まれること
地域おせっかい会議では、「こんなことをしたい!/してあげたい!」ということを応援し、会議の構成員だけでなく、共感・応援してくれる人とのつながりを深め、まちを元気にする取り組みを行っていきます。構成員の所属や属性が多様で、10〜80代まで世代も幅広いのも特徴です。これらの構成員によって、雲南市内の郵便局を活用した「健康ステーション(仮)」をつくる構想も立ち上がっています。
③ナスくる
信頼できる「第二の親戚」のような存在としてご家族に寄り添い、つながりとトキメキのある日常を一緒につくるウェルビーング向上サービスを展開しています。コミュニティナースが定期的に訪問して生きがいを応援し、地域との繋がりを形成するコーディネートを行います。合わせて、見守りや予兆検知も行っています。また、ご家族に“お元気レポート”として、楽しく過ごされている様子を専用アプリで届けることで、家族の輪をつないでいきます。元気なうちから、日々のなかの「うれしい」「楽しい」を一緒に大切にしていく。大切なご家族とすてきな関係性を保ことを願ってできたサービスです。
〈運営主体〉
「Community Nurse Company株式会社」
■ビジョン
まちや日常の暮らしのなかで「誰もが誰かの心と身体の健康を応援できる社会を実現させる」
■事業概要
①コミュニティナースプロジェクト(育成講座)
②コミュニティナースモデルづくりサポートサービス
・法人向けコミュニティナースモデルづくりサポート事業(健康的なまちづくりを推進する企業への業務協力)
・自治体向けコミュニティナースモデルづくりサポート事業(行政との成果連動型民間委託契約方式・ソーシャル・インパクト・ボンド検討モデルほか)/例:島根県雲南市と進める、市民みんなでコミュニティナースする「地域おせっかい会議」
③家族向けサービス(ナスくる)
コミュニティナースとは……職業や資格ではなく、実践のあり方です。地域の人の暮らしの身近な存在として「毎日のうれしいや楽しい」「心と身体の健康と安心」をまちの人と一緒につくっていく、「コミュニティナーシング」という看護の実践からヒントを得たコンセプトです。
〈取り組みをスタートした時期〉
2017年3月31日(会社設立)
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
創業者・矢田明子の父親は仕事優先で、健診などを受けてきませんでした。あるとき体調を崩し受診しましたが、すでにがんの末期でした。病気の前兆はあったため、誰かが一声かけていたら少しは未来が変わっていたかもしれません。そういった想いがきっかけとなり、矢田は看護師の資格を取得し、暮らしのなかから心と身体の健康を応援していくための社会実験を開始しました。
そこで生まれたコンセプトがCNCです。暮らしに溶け込むために、住民の目線に立った「毎日のうれしい/楽しい」を手掛けながら、「心と身体の健康と安心」をまちの人と一緒になって広げていく活動を開始したのが2009年のことです。
島根県を舞台に、矢田が看護学生の友人たちとこの活動をスタートしました。2014年頃からは、取り組みを知った方々が全国から訪れるようになり、これがきっかけでコミュニティナースカンパニーを創業し、求める方々へコミュニティナースについて伝え、共有していくことになりました。
事業としてコミュニティナースの普及・育成・モデルづくりに本格的に着手したのは、2017年。2020年には新型コロナウイルスの影響と、全国どこででもコミュニティナースを気軽に学ぶことができる、オンデマンドのベーシック講座、さらに実践者として事業化を目指す方のニーズに応えるかたちでステップアップ講座を開講しています。
また、コミュニティナースを取り入れたい自治体や企業からのニーズに応え、モデルづくりサポート事業を開始しています。現在は8団体と連携し、モデルづくりを進めています。コミュニティナースの活動を、ボランティアだけでなく、収入を得るかたちでも行える取り組みに昇華する意味も含み、コロナ社会のニーズに応える「ナスくる」というサービスも開発しています。
〈運営コスト〉
寄付や行政の助成金を活用し、事業をスタートさせました。現在はすべての事業で、サービス受益者からの利用料が中心となっています。また、新しい事業内容のため、他の民間企業と社会実験・調査研究としてのアライアンスを組み、進めています。
〈運営に必要な費用概算〉
400万円弱
〈運営資金の確保〉
自費、自治体予算
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
今までにまったくなかった取り組みをしていくにあたり、行政をはじめとする公共機関、医療機関、教育機関、地域住民に対して、その価値をわかりやすく説明することには苦心しました。地域と一緒になって価値をつくり出していくなかで、同じような活動をしているみなさんとの建設的な協働に繋げていくために、粘り強く対話し、小さな実践と実績を積み上げ、地道に進めてきています。自組織だけでなく、大手コンサルティングファームや財団、他の団体や個人投資家などからさまざまな応援や協力を得ることができ、一緒にコミュニティナースをかたちにしてもらえたことで、課題の解決策をみつけ、乗り越えてくることができました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
一緒にコミュニティナースをする仲間やパートナー、ファンが増え、オーナーとなって応援してくれる自治体や企業も増えてきています。「私もコミュニティナースしてたんだ」と、医療職以外の人にも取り組みが広がってきてたことで、毎日の楽しいやうれしいを感じる住民が少しずつ増えてきています。離れていても親孝行ができ、喜ばれるサービスが生まれ、利用の実績も出てきました。同居されているご家族から、「ナスくるを使い始めてから、両親の調子が安定してきたよ」と言っていただけます。
訪問したスタッフが脳梗塞の初期症状を察知し救急搬送した結果、その方は一命を取り留め、リハビリ後、日常生活に復帰することができました。制度外のできごとに柔軟に対応したサービスによって、その方の元気な時間が少しでも長く続くお手伝いができました。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
コミュニティナースプロジェクトでは、対面での座学、フィールドワークに価値がありますが、制約がかかることで価値が発揮しきれないことがあります。対象エリアの拡大に伴う、実践における質の担保の確保も課題です。
ナスくるでは、支払者のターゲット層は両親ではなく、県外に住む息子・娘たちですが、そこへのアプローチや営業が難しくなっています。また、「よい取り組みだ」と賛同してもらえても、「まだ元気だから必要ない」と利用には繋がらないことも多くあります。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
- 講座受講のオンデマンド化、地域おせっかい会議3分動画の作成
- 講座や地域おせっかい会議での、zoomを活用したコミュニケーション
- オンライン視察の実施、オンラインコミュニティの運営
- LINEオープンチャットやローカルテレビを使用した告知、PR
- 地域おせっかい会議に、発案者が一緒に活動したい人を連れて来てもらう
- 生きがい応援の手段として、本人に出かけてもらい、「やりたい」を実現させるための調整(地域おせっかい会議の現場との連動など)を行う
- 島根のため、地方のための働きかけを実践している団体や商店街などとパートナーとなり、一緒にナスくるを地域に落とし込んでいく
- 目の前のお客様にていねいに寄り添い、ナスくるのファンになってもらう
- 養成講座で育成したコミュニティナースの実践活動の場とする
地域おせっかい会議やナスくるの現場を「みんなでコミュニティナースする」場として、上記の取り組みをうまく連動させ、実践とともにある学びを提供し続けています。
〈今後のビジョン〉
「誰もが誰かの心と身体の健康を応援できる社会」を実現するために必要なことは、以下の3つだと考えています。
- 「よく行く場所にコミュニティナースがいる」、その風景が至る所にあり、それが当たり前の日常になること
- 人とつながり、まちを元気にしているまちの人たちや、同じビジョンを描くパートナーとチームになって「みんなでコミュニティナースをする」こと
- コミュニティナースプロジェクト、地域おせっかい会議、ナスくるなどを手掛け、それらを組み合わせて展開している「共に創り共に学ぶ拠点」を全国に波及させていくこと
■事業名:①コミュニティナースプロジェクト(育成講座)、②地域おせっかい会議、③ナスくる
■事業者名:Community Nurse Company株式会社
■取材協力者名:宮本 裕司(Community Nurse Company株式会社・雲南拠点マネージャー)
■事業所住所:〒699-1311 島根県雲南市木次町里方422