〈コンセプト〉
「喜びを分かち合い、笑顔でつながる仲間たち」をメインテーマとし、「笑顔とありがとうがあふれる相模原」を目指して、「お互い様の街づくり」を行っています。
〈特色〉
さがサポでは、「ウィッシュカード」の取り組みを行っています。さがサポの登録パートナー(認知症当事者・ご家族・認知症サポーターなど)それぞれが感じている「困っていること」や「やってみたいこと」などの思いを「ウィッシュ」と呼び、このウィッシュをみんなで分かち合い、「助けてもらいたい」気持ちと「助けたい」気持ちをつなげるためのカードが、「ウィッシュカード」です。投稿されたウィッシュのメッセージは、ホームページや会員情報メールで共有し、マッチングを事務局がサポートしています。ウィッシュコーディネーターを置き、お互いに気持ちよく活動ができるように、ウィッシュの実現をお手伝いします。
〈法人概要〉
・事務局:常勤1名、非常勤2名
・会員:約900人(会費なし)。会員は、公式LINEでお得な情報が届く、ウィッシュカードを使える等の特典あり。
〈運営コスト〉
・活動費は、イベント出店などのイベント収入で賄っています。
*人件費や諸経費(事務所費用、印刷、通信運搬費など)は、事務局のNPO法人全体費用より捻出(寄付等含む)。
・助成金申請(下記の助成金を受け、活動を行っています)
2020年9月:beOrange認知症まちづくり基金
2021年3月:キリン福祉財団「キリン・地域のちから応援事業」
NPO法人全体としては、市の委託事業を行っており、委託費を受けています。今年度は、日本財団の助成金を受け(2020年10月~2021年3月)、オンライン認知症カフェ支援を行っています。相談を受けるコールセンターやセミナーの無料開催、オンライン環境の無償貸出などを行い、新型コロナウイルスの影響で、相模原市内すべての認知症カフェが中止となっていた中、オンライン併用型等で地域の認知症カフェの活動を再開していくというミッションを担っています。
〈始めたきっかけ〉
認知症介護実践者研修を受けた後も、一緒に受講した仲間同士のつながりを維持するために団体をつくったのがきっかけとなり、2011年にNPO法人を取得、相模原市に拠点を置き、活動を進めてきました。相模原市内の認知症ケアに関する研修やキャラバン・メイト養成の講師などをする中で、養成された市民のキャラバン・メイトが一人で活動をするには限界があり、サポート体制が必要であることが、浮き彫りになってきました。
キャラバン・メイト同士がつながるネットワークの事務局を当NPO法人が担い、活動を重ねていく中で相模原市にキャラバン・メイト連絡会が立ち上がることになりました。
同時に、市内では認知症サポーターがつながる仕組みも確立されておらず、オレンジリングをもらったらそれで終わりとなってしまう現状があり、「さがみはら認知症サポーターネットワーク(通称:さがサポ)」として、養成された認知症サポーターが登録を行い、地域で支え合えるネットワークをつくってきました。
地域の若年性認知症のご本人やご家族から「誰かに助けてほしい、というのではなく、今までどおり接してほしい」「普通に飲み会などに声をかけてほしい」との要望があり、認知症サポーターに声をかけ、飲み会を開催したり、「ソフトボールがしたい!」という当事者の願いを叶えるべく、ソフトボールチームをつくったり、その仲間に認知症サポーター養成講座を開催し、認知症サポーターになってもらうなどの活動が始まり、現在の「ウィッシュカード」の取組みへつながっています(2015年~)。
〈人材確保の方法、人材育成の仕組み〉
さがサポでは、さまざまな活動やイベント、キャラバン・メイトが行う認知症サポーター養成講座等で、さがサポの登録を呼びかけ、パートナー数を増やしています。
さがサポを運営するにあたり、会員から「世話人」を置き、定期的に世話人会を開催しています。活動を継続するためにはどうしたら良いか、どうやって活動を広めていったら良いかなどを、互いにアイデアを出し合いながら進め、さがサポ登録パートナーの皆様にも、主体的に活動へかかわってもらえるようにサポートを行っています。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
支援を考える中で、認知症のご本人をどうやってサポートするか、という視点で考える傾向がありますが、認知症になったからといって支えられるばかりで、誰かのサポートをすることが難しいというわけではありません。
それぞれが得意なことを活かして、誰かのサポートを行うことはできます。認知症であってもなくても、「困ったときは得意なことで助け合う」という「お互い様の街づくり」を発信し、「認知症のご本人に楽しんでもらう」という発想ではなく「一緒に認知症のご本人さんも楽しむ」という考えを定着させるように奮闘してきました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
ウィッシュカードの取り組みについては、多くの方々からご理解をいただき、2019年にはNHK厚生文化事業団「第3回認知症とともに生きるまち大賞」をいただきました。また、ウィッシュカードの取組みを発展させ、「お仕事ウィッシュ」も生まれました。どちらについても利用された双方から感謝のお言葉をいただいております。双方から「ありがとう」と言っていただけると、コーディネーターも喜びが溢れてきます。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
新型コロナウイルス感染症が蔓延してから、実際に皆様とお会いできる機会が減ってしまったことが残念ではあります。オンライン等も活用していますが、同じ時間・同じ場所で楽しむことの大切さを実感しています。
〈持続させるための仕組みや工夫〉
世話人や事務局が常にサポートに回り、パートナーの皆さんが常に主体的にかかわれるように心がけています。また、アイデアの制約にならないように、できない理由は考えず、どうやったらできるかをみんなで考えるようにしています。
〈継続する仕組みや工夫〉
NPO法人の中で、事務局人件費を捻出しながら、「さがサポ」の活動に基金や寄付をいただいたりしながらやっています。新しい人材(世話人)をどう増やしていくかが課題ですが、今後、地元のサッカーチームと組んで、多くの市民の方々に認知症サポーター講座を知ってもらう機会をつくったり、互いのイベントや試合の際に一緒に出店を出展したりなど、幅広い層に知ってもらい、一緒に活動してくれる仲間を増やしていくなど、取り組みを計画しています。
〈今後のビジョン〉
「市民全員が認知症サポーターになる」という壮大な目標があります。
まずは、知らないことを知り合うきっかけづくりをやっていこうと考えています。介護事業所の中では、地域とつながりたいが、うまくつながることができていない事業所が多いと聞き、「さがサポ」の活動を介護事業所が法人単位で関われるような仕組みづくりを、今後始めていけたらと考えています。
さがサポの活動では、事務局スタッフは後方支援で、地域の方に世話人を担ってもらっています。今後も、地域の方が主体的に活動できるような体制にしていきたいと思っています。
「お互い様の街づくり」というキーワードで、何かあったときに困ったと言えて、助けられ上手になれるような、そんな街になっていくよう、これからも活動を続けていきます。
■事業名:さがみはら認知症サポーターネットワーク(通称:さがサポ)
■事業者名:認定NPO法人Link・マネジメント
■取材協力者名:井戸 和宏(認定NPO法人Link・マネジメント代表)
■事業所住所:〒252-0206 神奈川県相模原市中央区淵野辺4-4-2
■サイト:http://sagasapo.com(さがサポのホームページ)
http://link-npo.com(NPO法人Link・マネジメントのホームページ)
■取材・まとめ:高瀬 比左子(NPO法人未来をつくるkaigoカフェ代表)
■取材時期:2021年3月