〈コンセプト・特色〉
赤ちゃんからお年寄りまで、1つ屋根の下で過ごす富山型デイサービス(共生型デイサービス)
〈概要〉
共生型デイサービス×3カ所(それぞれ定員、22名、18名、15名)のほか、ショートステイ×2か所(それぞれ定員、3名、4名)、認知症対応型共同生活介護、居宅介護支援事業所、就労継続支援B型事業所、相談支援事業所を運営しています。
〈運営主体〉
NPO法人デイサービスこのゆびとーまれは、1993年、富山赤十字病院に勤めていた看護師3人が開所しました。対象は赤ちゃんからお年よりまでで、障害があってもなくても利用可能としました。28年経った現在も、活動や理念は変わっていません。
〈取り組みをスタートした時期〉
1993年7月2日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
富山赤十字病院を退職した看護師3人が立ち上げた、「民営デイケアハウスこのゆびとーまれ」が活動の始まりです。そのなかの一人、現代表の惣万佳代子は、病院でいくらお年寄りの命を助けても、最期の場面で「家に帰りたい」「畳の上で死にたい」と泣いている場面をたくさん見て、こういったお年寄りたちを助けたいと、「このゆびとーまれ」を設立しました。
〈運営に必要な費用概算〉
2430万円/月
〈運営資金の確保〉
介護保険、その他の公的補助
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
1993年に開所しましたが、共生型デイサービスという制度がなかったため、補助金はでませんでした。初年度の利用者は1日平均1.3人で、利用料金は1日2500円だったので、まるっきりの赤字でした。ただ、全国から「このゆびとーまれ、がんばれ」という寄付金が年1500万円集まり、その後も1000万円以上の寄付が数年続いたため、何とか経営ができました。
1998年、富山県は全国で初めて、柔軟に利用できる補助金を交付しました。お年寄りと障害者を分けていた制度の壁を打ち破ったのです。利用者が5人以上の事業所には年間180万円、10人以上の事業者には360万円の補助金が出るようになりました。
1999年5月12日には、富山県初のNPO法人このゆびとーまれが認証されました。2000年4月には介護保険の指定業者になったことで、経営が安定しました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
地域にはさまざまな人がいますが、その人たちのニーズに応えています。制度を越えて、まるごと支援しています。
2018年、共生型デイサービスは県下130事業所、全国2400事業所に増えました。地道に活動を続けてきてよかったと思います。継続は力なり、です。
一つ屋根の下で、赤ちゃんからお年寄りまで、障害があってもなくても過ごすことができるハウスが、全国に広がっていくことが楽しみです。認知症のお年寄りも、赤ちゃんの顔を見るだけで笑顔になります。「子どもたちと一緒にいると気が晴れる」といってくれます。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
職員(介護福祉士や夜勤ができる人)を募集しても、なかなかみつかりません。定員を減らすかどうか考えています。
多職種の職員がいるため、介護観や介護技術の統一に難しさがあります。1代目が高齢になってきたので、2代目となる後継者へ引き継ぎたいと考えますが、理念を伝えることやタイミングが難しいと感じています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
仲間をつくることです。富山ケアネットワークや全国ネットワークの活動を続け、国や県に意見を言い、すべての人が安心して暮らせる町づくりをすることです。
NPOでは、「よい介護をしよう」をモットーにしています。利用者に寄り添い、“個”を見て、動きや表情などを観察します。お年寄りが転倒による骨折をしないよう、常に目配り、気配りをしています。27年間で、認知症のお年寄り(介護度5)の転倒による骨折は1例のみとなっています。
これまで、生後1カ月の赤ちゃんから、100歳のお年寄りまでが利用されています。共に生きている今を大事にしています。
〈今後のビジョン〉
人口1万人に対して1カ所の共生型デイサービスが全国にあれば、日本は住みやすくなると確信しています。2018年の介護保険法改正で共生型サービスが創設されたため、今後少しずつ増えていくことでしょう。
これから共生型デイサービスに取り組む人は、理念から入ってください。共生型とは、誰も排除しないこと、共に生きることです。共生型は世界中で、特に日本の文化と似ている東南アジアに増えていくように思います。
■事業名:共生型デイサービス(富山型デイサービス)
■事業者名:NPO法人デイサービスこのゆびとーまれ
■取材協力者名:山口 賢一(NPO法人デイサービスこのゆびとーまれ「はたらくわ」サービス管理責任者)
■事業所住所:〒930-0928 富山県富山市富岡町355