〈コンセプト・特色〉
認知症カフェ「as a cafe」を中心とした地域の福祉拠点
〈概要〉
認知症カフェ「as a café」を運営しています。コロナ禍以前は年間5000人近くの人が利用していました。現在は、感染症対策にのっとって臨機応変な運営を行っています。認知症の方やそのご家族が気軽に相談することができ、彼らの居場所となれるような場所を目的としています。認知症を学ぶことができる場として、大学の講義、ゼミ、地域研修会、その他連携会などにも活用されています。また地域の憩いの場、福祉拠点にもなっています。2016年の熊本地震の際には、避難所として地域に開放しました。
〈運営主体〉
「特定非営利活動法人あやの里」 2001年に開設したあやの里は、設立当初より、認知症に特化した介護事業所を目的として運営をスタートさせました。認知症のある方々にあった住環境と専門知識をもった職員が揃っており、ご相談から看取りにまで対応できる体制をとっています。「介護事業所だとは、わからなかった」という声が地域の方から聞こえるように、近隣に密着した緑豊かな空間が、お住いの方々やご家族、地域住民に好まれていると思います。
〈取り組みをスタートした時期〉
2015年3月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
オランダ発祥の「認知症カフェ」は、当時、画期的な響きをもっていました。それまでは「認知症勉強会」「地域で支えあおう認知症の集い」等、専門職や関係者しか興味がもてないようなアプローチが多かったなか、「○○カフェ」の先駆けとして「認知症カフェ」が誕生し、とてもキャッチーなネーミングだったと思います。認知症の初期の段階では、どこに相談に行けばよいかわからないといった声が多く聞かれていたため、気軽に相談ができる場所の一つとなりえるのではと取り組みをスタートさせました。
〈運営コスト〉
母体が特定非営利活動法人あやの里であるため、母体からの出資がほとんどです。企画によっては参加者から徴収、または市の助成金などを活用させていただいています。持続可能な取り組みのために、あまり自分たちでイベントをつくりすぎないことを意識しています。認知症の方やご家族からのご相談には常に対応していますが、その他のイベント企画は外部からの持ち込みが多いため、運営コストも外部団体に協力いただくことがほとんどです。
〈運営に必要な費用概算〉
2~3万円/月(光熱費)
〈運営資金の確保〉
自費、寄付、その他の公的補助
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
初めは勉強会やイベントをたくさん企画したので人集めや運営が大変でした。次第に外部に頼るようになり、コラボ企画がほとんどとなって運営はスムーズになりました。よい活動をしている方々が地域にもたくさんいらっしゃるので、お互いの目的が合ったところで協力し、一緒に企画を進めることは、今では大きな楽しみの一つでもあります。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
「as a café」には、「地域と、介護事業所に住む認知症高齢者との、社会的接点の場」という目的もあります。ご家族や以前からのご友人等が、ご入居の方々と「as a café」にてお茶を楽しむような時間を長くもてることがとても好評です。お盆やお正月などには2世代3世代のご家族が集まり、食事会等思い思いの時間を過ごされる姿がありました。カフェでご入居の方がくつろいでいる時に近所の子どもたちが遊びに来るなど、ほほえましい時間も日常的に見られました。現在は新型コロナの影響もあり、感染症対策にのっとった制約はありますが、ご家族だけの時間を過ごせる大事な場となっています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
新型コロナの影響を受け、地域交流の場としては長らく休止状態でした。ただ、ICTの活用や、感染症対策をきちんととればできることもあるので、ハイブリッド型研修会やオンラインボランティア等、少しずついろいろなことを試しています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
達成したい目標があれば、とにかくやり続けることだと思います。「as a café」は年中無休です。認知症で困っている方は、今このときに困りごとを抱えている場合があるので、いつでも気軽に相談できる場所として存在しています。母体の法人は24時間専門スタッフが在中していますので、緊急でもなにかしら対応ができます。
相談業務としては年間約170件に対応していますが、介護保険サービスへの紹介以外にも、日常的な認知症の困りごとの相談に多くの時間を割いています。「とにかく話を聞いてほしい」「出口のないつらさを共有してほしい」という方はとても多いので、これからもそういった声に耳を傾ける場であり続けたいと思います。
〈今後のビジョン〉
特に大きなビジョンは掲げていませんが、「特別なイベントではなく豊かな日常を」をモットーにしています。
現在は新型コロナの影響を受け、以前のようにたくさんの人が集まる活動は難しくなっているので、新たなアプローチを模索しています。 関わる方々が笑って過ごせる日々が続くよう、自分たちができることをやり続けていきたいと思います。
■事業名:認知症カフェ「as a cafe」
■事業者名:特定非営利活動法人あやの里
■取材協力者名:岡元 奈央(特定非営利活動法人あやの里副代表)
■事業所住所:〒862-0914 熊本市東区山ノ内2-1-14