〈コンセプト〉
認知症の人と介護をしている家族の居場所として
本人にとっては役割が
家族にとっては共感できる場として
〈特色〉
地域のボランティアの方をはじめ、当事者の方が強い意欲をもって運営しているところです。認知症の当事者ができることは、接客や配膳など、積極的に行ってもらっています。花壇づくりなどは地域のボランティアの方と当事者が一緒になって行っており、地域との一体感を感じられるところも特色といえます。
〈取り組みをスタートした時期〉
2012年7月
〈概要〉
開けている日:毎月第二木曜、第三日曜、及び毎週土曜日。
第二木曜と第三日曜日に関しては、コミュニティカフェを運営しています。定員は約20名程度。運営スタッフは15~16名程度です。
毎週土曜日は「はっちゃけ文庫」と称して、認知症の当事者たちが中心となり、ご自身でつくったお弁当を持参で行っているイベントです。当人たちが「やりたいこと」「行きたいところ」「食べたいもの」をそれぞれに提案し、一つずつ順番に実現させていくというものです。実施当日は、ラジオ体操から始まり「昨日のことで印象に残っていること」を話してもらいます。食事を終えると散歩へ出かけ、その後に提案してもらっていたことを行うといった日課を組んで実施しています
〈取り組みのきっかけ〉
スタートしたきっかけになったのは、当時認知症の診断を受けた杉村さんという男性がいまして、この方が「僕はまだ人の役に立ちたいんです」と打ち明けてくださったことです。この言葉を受けて、杉村さんには何をしてもらえるだろうと試行錯誤し、コーヒーをお出しすることならできそうだということになったため、プレ開催時に練習を積みました。いよいよとなったときに、この方を「マスター」としてコミュニティカフェをオープンしました。
〈運営コスト〉
スタートさせたときには、国の事業費として市に降りてきていた単年度の補助金もいただきました。これは一時的なものですが、冷蔵庫やミシンなどといった大きなものを調達するのに使わせていただきました。
運営資金としては、ほとんど寄付で成り立っており、ボランティアスタッフが手作り品を作って売ったり、提供しているランチに使っている野菜は地域の農家の方から譲っていただいたり、持ち寄りでバザーを開いたりしてやりくりしていました。
〈運営に必要な費用概算〉
ひと月あたりおおよそ7~8万円くらいです。
宇都宮市から事業委託を受けているため委託費をいただいているのと、ランチの売り上げ及び寄付金が主な運営資金となっています。この事業委託費は、宇都宮市内にある「オレンジサロンえん」「オレンジサロン あん」と石蔵カフェを含めた3事業所に対していただいているものなので、案分して事業収入としています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
持続させるため「認知症パートナー養成講座」や、傾聴ボランティアの養成などを通して後継者を探しているところです。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
地域に密着しているからこそですが、チームづくりに最も苦労してきました。地域の人たちが集って行っていることで、近所であるが故のしがらみなどがあり、関係性を創っていくことに苦労しました。その中でいかに当事者の自信を落とさず、モチベーションを保っていられるかという点に腐心してきました。
工夫した点は、一人ひとりの気質を知り、大事にしてきたことが挙げられると思います。一人ひとりを大切な人として接し、常にそのことを伝えて認めてあげることが一番だと感じています。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
うまくいっているかどうかはわからないのです。わからないながらも、当事者や周りの方からの評価は高いようです。しかし高い評価をいただいている割に実感があまりないのです。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
今の悩みは、後継者がいないことです。認知症サポーター養成講座を受講された方たちができることはないかと模索しているとのことで、宇都宮市とタイアップし認知症パートナー養成講座というのを開催しているところです。その実習施設として石蔵カフェを使ってもらっていますが、なかなか運営してくださる方は現れないのがつらいところです。また発信力が弱いところも悩みの一つです。
〈今後のビジョン〉
今後、後継者が決まり、組織としての体力がついてきた暁には、毎週1回は開いていきたい。より居場所としての価値を上げて、全国各地にある8000軒の認知症カフェと連携をしながら、「石蔵カフェ」のブランドを追求していきたいと考えております。
■事業名:オレンジサロン石蔵カフェ
■事業者名:認知症の人と家族の会栃木県支部
■取材協力者名:金澤林子(認知症の人と家族の会栃木県支部代表)
■事業所住所:〒321-3237 栃木県宇都宮市道場宿町1341番地
■取材・まとめ:鈴木 隆浩(居宅介護支援事業所勤務)
■取材時期:2021年3月