〈コンセプト・特色〉
カンタン・安心・便利にケアする人をケアする
〈取り組みの概要〉
iPhoneをお持ちの方であればどなたでもご利用可能です。
いつでもどこでも気兼ねなく3分程度の空いた時間で家族介護に役立つ、実践できるケア技術が学べます。家族介護者の介護実践を記録する日記機能があります。やってみたことを見える化することで心の健康につながることが期待できます。それでも不安なこと、不明なことは、ユマニチュードインストラクターに無料で電話相談できます。また介護に役立つ地域情報やサービスを探しやすくなっています。
〈運営主体について〉
「株式会社エクサウィザーズ」
「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」というミッションのもと、企業の各部門や全社課題の解決にAIを利活用して取り組みながら、個社の課題から見つけた業界課題や社会全体の課題を解決するために、介護・医療・HR・ロボット・金融・カメラなどさまざまな領域でAIプロダクトの開発と実用化に取り組んでいます。メンバーにはAIエンジニアをはじめ、ソフトウェアやハードウェアのエンジニア、戦略コンサルタント、UI/UXデザイナー、介護などのドメイン専門家、研究者、政策の専門家など分野横断的な人材が在籍。超高齢社会を迎えている日本において、各領域の現場ニーズと課題を徹底的に理解しながら事業を展開しています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2020年3月中旬
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
2020年1月のCOVID-19のパンデミックにより、被介護者の施設等のサービス利用を家族介護者が心配して利用を控える、またサービス提供事業者がその利用を縮小するという状況が起こりました。社会活動の自粛は、特に家族介護者、被介護者ともに不安・閉塞感などから大きなストレスを抱える暮らしになりました。また全国で定期的に開催してきた対面集合型のユマニチュード研修も自粛となりました。
このことはケア専門職の業務負担感の軽減や、ケアの質向上に寄与し働きがいを再度感じられる機会を提供ができない状況となりました。家族介護者は一緒に居ることが耐えられない、せめて話を聞いてほしい、ユマニチュード研修をしてほしいという要望が寄せられました。このような家族介護者や専門職からの要望に応えたい、今こそケアをする人をケアしたい、介護にかかる社会課題として取り組む時期であるとして何かできないかとなったことがきっかけです。
〈運営コスト〉
企画、制作、撮影、編集、プロダクト(アプリ)化をすべて社内で内製しています。弊社には家族介護に携わっていた者や、医療関係者がユマニチュードのインストラクターとして雇用されており、また撮影編集のエキスパート、プロダクト化できるエンジニアなど幅広い人材がいます。運営についても社内人件費で賄っている状況です。
現在はAppstoreでダウンロードが可能であり、コロナ禍が消息するまでの当面は無料としています。2020年7月には、SMBCスタートアップ支援プログラムの介護分野における課題解決領域への貢献として最優秀賞を受賞しました。
〈運営に必要な費用概算〉
社内人件費で賄っています。
〈運営資金の確保〉
自費、その他の公的補助
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
これまで、医療介護の専門職の方にはユマニチュード研修を届けてきましたが、家族介護者へのユマニチュード研修は開発途上でした。知名度も十分とは言えない現状の中、興味をもった介護者家族が気軽に学んでいけるものがあれば拠り所になれるのではないかと考えました。アプリ内にどのような動画を入れていけばいいか、また、インプットだけでなく、実践し、介護記録を付けることでメンタルケアにもなるといった機能の提供を目指しました。短い期間の中で、デザイン、技術、宣伝、ケアチームが組織横断的に一丸となり専門知識を出し合い開発しました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
家族介護者の困りごとあるあるを100以上抽出しました。開発チームが介護者の現実をリアルに追体験できたことで、ケアをする人をケアすることが現在のCOVID-19禍における自粛を強いられる社会情勢においては喫緊の社会課題であると真摯に認識できました。困りごとを厳選した事例をもとに、解決方法を学ぶための動画を制作しました。家族介護者はもちろん、ケア従事者にとっても理解しやすいものになっています。
またユマニチュードの技術を体系的に学ぶコースもあるため、さまざまなステージにいる介護者のニーズに沿うように工夫されており、介護未経験者や子世代が活用できるようにしました。一つの困りごとの症状へ一つの解決策を提案、まずは介護をやってみようというシンプルな内容は介護者の負担感の軽減となっています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
ユマニチュードはまだまだ認知度が低い状況です。その影響か無料であるにもかかわらず、ダウロード数が伸びていないことが課題だと考えています。大手メディアへの宣伝ができれば飛躍的に伸びる可能性はありますが、グループ内では宣伝や情報拡散の手段を講じるなどが不得手な分野であり、なかなか取り組めていない現状もあります。
本アプリからは電話相談が無料で利用できる仕組みもなかなか活用がされていない状況です。ユマニチュードや本アプリについて、また介護分野の社会課題に取り組んでいる会社であることが、まだまだ認知されていないというところが悩みどころではあります。
〈持続させるための仕組み、工夫〉
ユマニチュードのオンライン研修や家族講座をスタートし、家族介護者講座はケアウィズを活用した構成で提供することも検討しています。また、研修サイトへの本アプリの情報の掲載、研修・講座受講者へダイレクトに情報提供するなどの宣伝もしています。
自治体・地域包括支援センターや居宅介護支援事業者など在宅療養を支える各種事業者、認知症の家族会、認知症カフェ、認知症サポーターのほか、家族介護者や認知症の当事者にかかわる職種や団体への普及させたいため、今後は金融機関やコンビニエンスストア・スーパーなどを活用する認知症高齢者へ接客する機会が多い職種が活用できるようなお困りごと解決編をつくることも検討していきたいと思います。
〈今後のビジョン〉
ユマニチュードは、人間性を尊重し、互いに良い関係性を築くことで、幸せや優しさを相互に感じることができるコミュニケーション技術です。ケアが必要な状態は、どのようなライフステージでも起こりえます。現在のように緊急事態宣言がたびたび発出される非日常の暮らしでは、見つめ合い触れ合うという当たり前が強制的に制限され、関係性の希薄さとつながると思っています。
自分らしさのためにどのように関係性を築くのかという問いへの一つの答えがあるユマニチュードは、暮らしに必要な技術です。ユマニチュードにより街中が優しさにあふれ、住み慣れた地域で誰もが安心して暮らすために、この技術をあらゆる学ぶ機会に取り入れること、日本中がユマニチュードを知っている状態、スイッチを押すと明かりが灯る、という当たり前の存在にしていきたいと思います。
■事業名:CareWiz 家族支援 家族介護のお悩みを解決するアプリ
■事業者名:株式会社エクサウィザーズ
■取材協力者名:盛 真知子(株式会社エクサウィザーズ所属、ユマニチュードインストラクター)
■事業所住所:〒105-0013 東京都港区浜松町1-18-16 住友浜松町ビル5階