〈コンセプト・特色〉
市民と医療者がともに行う、“みんなが みんなで 健康になる”健康習慣の取り組みです。
〈概要〉
■規模地域の医療施設や保険薬局、介護施設、自治体の出張所、団地や商店街の集会所、市民サークルの場などを拠点に全国各地で展開しています。
■内容地域のいろいろな場で、そこで働く医療者と、そこで暮らす住民が一緒になって医歩(メディカルウォーキング)を実践することで、地域の住民の健康度を向上させていきます。
※医歩は医(メディカル)と歩(ウォーキング)を組み合わせたことばです。ウォーキングを最新の医学の研究と知見に基づいて科学的にとらえ、歩くことと健康の関係を導きだします。医療者が考え、実践する、健康を維持し、増進する歩行法です。
〈運営主体〉
「一般社団法人 みんなが みんなで 健康になる」一般社団法人 みんなが みんなで 健康になるは、前身となる一般社団法人チーム医療フォーラムとして2008年に活動をスタートしました。2021年1月に、一般社団法人 みんなが みんなで 健康になると法人名を変更し、新たなスタートを切りました。健康はひとりのものではなく、みんなのものであると考え、地域で暮らす人たちとそこで働く医療者が一緒になって、病気を予防し、健康を維持、増進する活動に取り組んでいます。
「知」「情」「意」の3つの分野でプロジェクトを展開しています。「知」として、みんなが みんなで 健康になる「研究所」、「情」としてMED(いのちの場から社会をよくする、プレゼンテーションイベント)、「意」として医歩(メディカルウォーキング)を位置付けています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2013年10月12日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
地域の病院の医師として臨床の現場でいろいろな患者さんと接する中で、「病気になってから」ではなく「病気になる前」に、病気を予防し、健康を維持する取り組みが必要であり、何かできないかと考えていました。
そんな時にある医学雑誌で、歩行速度と余命の関係を長年にわたって調べた論文に出会い、「これだ!」と思いました。歩行速度が速ければ余命が長くなることを証明したものでした。年齢や体力に関係なく、いつでも、どこでも、その人にあったやり方で実践できる健康法として医歩を考えました。勤務する病院の患者さんや地域の人たちを対象に、毎月、医歩の取り組みを始めました。
〈運営コスト〉
スタート当初はボランティアでした。趣旨に賛同してくれる地域の医療者が手伝ってくれました。スタートアップの期間に運営の体制の確保と維持の取り組みを始めました。テキストやグッズ(Tシャツ)などのプロダクトの販売、医療者を対象として認定の医歩インスタラクター講座の開設など、事業の拡大と結びつく戦略を構築していきました。
COVID19の影響を受けてオンラインとリアルのハイブリッドの講座「医歩の学校」を開講しました。全国から受講生を募ることで、幅広くニーズに応えるとともに、事業の継続性を確保することにつなげようと考えています。
〈運営に必要な費用概算〉
30万円/月
〈運営資金の確保〉
自費、寄付、会費収入、企業賛助
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
地域の場でスタートした医歩の試みは、ゆっくりとですが、医療者のみならず、市民の理解を得て、地道に活動を続けてきました。いろいろな地域の場での開催も生まれてきました。
順調!だと思った矢先にCOVID19が起こりました。地域の場でのリアルな開催ができなくなり、事業の継続性が確保できなくなりました。これまで順調であっただけに出口が見えなくなりました。しかし、「変わらなければいけない」との意志をもって、法人名を変更し、新たな戦略である医歩のオンライン化に打って出ました。結果はこれからですが、変わることで新たな一歩を踏み出せたと考えています。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
臨床の場にいる医療者は、必要性を感じていても、自分一人の力では地域の場に出ることはできません。医歩は地域の場で医療者と市民が一緒になって取り組む健康習慣です。この趣旨に賛同した医療者が数多く、医歩の活動に参加してくれました。私たちの予想もつかない地域で医歩の種がまかれています。医療者が地域の場で、普段着で、普段の言葉を話す光景が生まれています。地域の住民の方からも「続けてほしい」と言う声をたくさんいただくようになりました。医歩という健康習慣が地域の人たちのみならず、そこで働く医療者との結びつきも生み出していることに、「本当にやってよかった」と思っています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
COVID19の影響で活動の持続性と広がりが影響を受けたことは先に述べた通りです。打開策として考えたオンライン化の取り組みはまだまだこれからですが、対象となる市民のICTへのリテラシーが壁の一つとなっています。地域で暮らす高齢者を対象にしたコンテンツを作成しても、スマホなどのデバイスやオンラインの環境がなければせっかく作ったものが利用されません。想像以上に高齢者のデジタル化の壁は大きいと感じています。
ただし、これからの社会を考える時に、高齢者がICTのリテラシーを保持することは社会生活で必須となっていくのではないかと考えています。その視点に立って、愚直に役に立つ、望まれるコンテンツを作り続けるしかないと考えています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
団体の活動を持続させるためには、自分たちのちからだけでは上手くいかない、プロジェクトが広がらない、持続できないことを強く認識しています。いろいろな立場や役割で活動する団体や組織、人たちとつながることが大切であり、必要なことだと考えています。最初は医療から出発し、医療の文脈で活動を展開してきましたが、生活のなかの一つの要素として医療を捉え、医療以外の幅広い分野の活動とリンクする、コレクティブインパクトであることを常に意識しています。そのなかで予想もつかなかったつながりが生まれ、新たな事業の展開が生まれることを数多く経験してきました。
〈今後のビジョン〉
一燈照隅万燈照国…、地域のそれぞれの場の燈が、やがて広がり、国を照らし、世界を照らす燈であることを願っています。医歩は特別な用具や道具も必要ではありません。その人の体力や状態に応じたレベルから、安全、安心に〝医歩歩き〟を始めることができます。国や人種、文化を超えて、世界のどこでも、誰もが、実践できる健康習慣です。超高齢化社会の先進国である日本が、世界に発信できる新たな健康習慣として、また、COVID19の社会において安心、安全に実践できる健康習慣として、医歩が「もったいない」に続く、世界で通用することばとなることを願っています。
■事業名:医歩(メディカルウォーキング)■事業者名:一般社団法人 みんなが みんなで 健康になる■取材協力者名:秋山 和宏(一般社団法人 みんなが みんなで 健康になる代表理事) ■事業所住所:〒271-0091 千葉県松戸市本町21番地2 ■サイト:https://minnadekenko.com/