〈コンセプト〉
笑いで“元気”と“やる気”を引き出し、人生の最期まで笑いあえるコミュニティづくり
〈取り組みをスタートした時期〉
2009年1月20日
〈概要〉
笑いの効用を、誰もが享受できる実践法として提供し、高齢社会に貢献します。
笑う力を鍛え、一生涯「おいしく食べる」「自分で行きたいところに行く」「ごきげんでいる」人を増やす笑い合えるコミュニティをつくり、コミュニティをつなぐ交流活動をしています。2009年から、笑いの健康法である笑いヨガ(インド発祥)を、提供できる笑いヨガリーダー養成講座並びに、リーダー人材を認定する笑いヨガティーチャー養成講座を開催してきました。
介護予防・認知症予防・認知症ケアに活かせるプログラムを、笑トレ(わらとれ:笑う力を維持向上させることで、心身の健康状態の維持・向上を目指す手法)として開発し、それを活用した笑いケアサポーター講座をNPO、自治体、社会福祉協議会等に講演・講座等の形で提供してきました。
リーダー/サポーターたちのスキルアップと継続して学べる講座を定期開催しています。また、現在はオンラインサロン笑い道の活動の一環として開催しています。
また「交流の場」として各地で全国笑いヨガ大会を開催してきました。
〈運営主体について〉
「株式会社アートランド」
株式会社アートランドは1983年、高田佳子が「笑い」「高齢社会」「ダイバーシティ」をテーマに設立した企画・設計事務所としてスタートしました。現在は社員3名で日本笑いヨガ協会の運営のみを行っています。地方での講座や交流を目的とした全国大会は、その地域の笑いヨガティーチャーや実行委員として有志が主体的に事業展開しています。
〈取り組みのきっかけ〉
高田が代表を務める株式会社アートランドは、終始「笑い」をテーマとした業務に取り組んできました。まちづくりの企画・設計事務所、イベント(ストリートパフォーマンス)プロデュース、ケアリングクラウンと、「笑い」の心理的・生理的・社会的効用を、誰もが得られるものにすることを目指し、業務展開してきました。
2009年1月インドで笑いヨガティーチャー養成講座を受講したことで、認知症や障がいがあっても取り組める健康法であると考え、笑いの健康法に事業を集中させました。
笑いヨガは、笑う動作の運動として展開するため、誰がリードしても笑いによる生理的変化を簡単に得られ、それに伴い心理的変化を起こし、長期的には社会的効用も得ることができるものです。日本の超高齢社会の課題の多くを解決できる可能性があると考え、この普及を目指しました。
〈運営コスト〉
笑いヨガを定期的に行う笑いクラブ、並びに笑いヨガ有資格者の講師紹介は、非営利活動です。その他有資格者への情報提供も無償で行っています。笑いヨガを地域で広めようという人に対して助成金・補助金を獲得のためのアドバイスも無償で行っています。
笑いヨガを学ぶ資格講座と介護予防・生涯教育・子育て支援等の講座や企業研修は、有償で行っています。有資格者の個人の笑いヨガ活動を支援するための、教材や物品販売、並びに印税・原稿・講師謝金等を運営資金としています。
現在は、講座開催が困難であるため、全国の実践者が地域と連携してシニアのケア現場に展開できる、汎用性のあるプログラム開発のため、クラウドファンディングを計画しています。
〈運営に必要な費用概算〉
■140万円/月
〈運営資金の確保の手段〉
自費、自治体予算、オンラインサロン会費
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
まずは自分の「元気」と「やる気」をコロナ禍で失うことがないよう、FacebookやZoomを用いて、イベントを行ってきました。現在、さまざまなテーマで日本笑いヨガ協会Facebook ページで「ウィークエンドライブ」と題したイベントで、認知症介護・介護予防・その他の健康テーマでプチ講演会を行っています。
代表の高田佳子ページでは、毎朝10分間の「朝の笑トレ」を行い、笑いの生活習慣を維持していただけるよう、取り組んでいます。
2020年8月からは、オンラインサロン笑い道を開設しています。これにより、全国のメンバーが、やる気(モチベーション)を維持し、地域を超えた学びの場が誕生し、継続教育が可能になったことで、地域の中でのオンライン笑いクラブや、福祉施設での活用を消滅させることなく工夫しています。
2020年2月迄東京で毎月開催・地方で不定期開催していた「笑トレ教室」「シニアケアを考える笑いカフェ」といった活動や、月例交流会、メールマガジン、スキルアップのための情報、笑いクラブのアーカイブ等、メンバーのライフスタイルにあったプログラムの提供と、心身の健康を維持向上させる生活習慣づくりの支援、IT使用に関する個別サポート等を行っています。意欲がありながら、オンラインに適合できない参加者のサポートも行っています。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
笑いヨガ資格は、インドのラフターヨガインターナショナルユニバーシティという民間団体の資格であり、2日間の講習で取得できます。笑いヨガそのものはシンプルで、笑いの量を確保できれば効果が得られるものです。しかし教える内容が標準化されておらず、資格取得要件や更新もないため、指導者の解釈によって全く違う印象のものになり、笑いヨガ(Laughter Yoga)とひとくくりにはできない多様性を見せ、それが普及の壁となる場合がありました。
日本笑いヨガ協会では、笑いをエクササイズと考え、笑トレとして成果を測定可能なものとする独自の標準化を行ないました。これにより、笑いの効果を実感しやすくなり、実践者が増加しました。
口腔機能向上を目指す「お口の笑トレ」や、座位でも全身運動ができる「座って笑トレ」等のプログラムを開発したため、保健師・看護師・介護職員・医師・リハビリスタッフ(OT・PT他)といった実践現場をもつ受講者が多く、実践していただいています。また、その結果を多くの方に学会等での研究発表や、論文・著書で紹介していいただきました。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
笑う動作は、呼吸機能を使い、ストレッチ・筋トレ・有酸素運動・口腔機能向上と組み合わせることで、短時間で運動効果が得られる手法となります。また、一般的な笑いの効用として生理的効用・心理的効用・社会的効用がいわれていますが、介護施設職員、医療・福祉・教育の現場で、「笑顔」で現場を元気にしたいと考える実践者が、多数生まれました。
12年間で笑いヨガリーダーを延べ5559人認定し、リーダー認定できる有資格者を143人(主催講座全体では446人)育成しました。さらに日本笑いヨガ協会が独自に自治体・ケアに取り組むNPO・社会福祉協議会等に展開している笑いケアサポーター437人を育成し、彼らの活動から、多くの人の心身の健康状態の向上が報告されています。看護師・教師・保育士を中心に、セカンドキャリアとして、笑いの健康法を地域で提供している人材が増えています。
全国笑いヨガ大会を定期的に開催し、研究や実践の結果が発表されました。交流の場として、笑いのコミュニティが構築されました。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
2020年3月より、日本笑いヨガ協会主宰の笑いクラブ・講座をすべてオンライン化しました。笑いヨガは、対面して声を出すため、コロナ禍での実施は見合わせた方がよいと考えられることへの対応です。当協会は再開の決定をする立場にはないため、実践者の医師グループが任意でガイドラインを策定しています。地域によって再開時期は異なるのですが、地域の状況を把握し、アドバイスをすることができません。個々のリーダーたちは笑いヨガの活動休止中で、物品販売事業が低迷し運営資金調達に困難をきたしています。
受講者は高齢者も多く、ディバイスの使い方に慣れていない人が多いため、ITサポートを無償で行ってきました。オンラインサロンをつくりましたが、資金難で紙媒体での通知ができず、理解が進みません。
〈今後のビジョン〉
笑トレは、認知症や視聴覚障がいがあってもでき、ストレス解消やコミュニケーションの促進に効果があります。地域の人が、セッションをリードする指導者なしに笑トレ(笑いとエクササイズ)を、地域のサロンや公民館にとどまらず、寺・神社で自発的に行う楽しめるプログラムを開発し、年齢や立場を超えて笑いあって健康になる文化を作りたいと考えています。
笑トレは、道具がいりません。介護職員がレクリエーション・体操・口腔機能向上の活動にすぐに使えて、みんなの負担が少なく効果が大きく、ケアを受ける高齢者が自発的にやりたがるプログラムを開発し、介護現場のデフォルトとなるような、オンデマンドプログラムをつくりたいと思っています。
そして、介護現場や居宅介護の家族を含め、その効果や課題について情報交換できる地域グループをつくっていきたいと考えています。「元気」と「やる気」が満ち溢れた人たちが、認知症になっても、障がいがあっても笑い合って暮らせる環境づくりに、みんなが関心を向けられる取り組みをしていきます。
■事業名:笑って元気!
■事業者名:日本笑いヨガ協会(運営:株式会社アートランド)
■回答者名:高田 佳子(日本笑いヨガ協会代表)
■事業所住所:〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-2-27階