〈コンセプト・特色〉
アルツハイマーカフェの理念の理解に基づく認知症カフェ企画運営者のスキルアップ
〈取り組みをスタートした時期〉
2018年8月1日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
日本では2012年以降、多様な認知症カフェが全国に広く普及しました。しかし、詳細な運営方法が紹介されず、その本質、意味など、「なぜ必要なのか」が運営者に理解されないまま普及したこともあり、対象者である認知症のご本人、ご家族、地域住民に必要性が理解されていないという課題が残りました。これは、認知症カフェを継続していくうえで課題となります。
そこで、25年以上継続するオランダのアルツハイマーカフェの構造を学び、それぞれの地域の特徴に合わせてアレンジすることが継続の一助になると考えました。オランダのアルツハイマー協会の承諾を得て、モデレーター研修のカリキュラムをわが国の認知症カフェに援用・再構築しました。
〈運営コスト〉
認知症カフェモデレーター研修そのものは、研修参加者の受講費によって運営しています。実施主体である当センターは、公的資金によって運営され、運営費が賄われています。ただし、その運営費は、認知症カフェモデレーター研修の運営費ではなく、認知症介護指導者養成研修の運営に必要な予算です。
〈運営に必要な費用概算〉
研修参加者の受講費により、研修の都度、徴収しています。
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
認知症カフェを継続するためには、多様な価値観の中で、その地域の特徴に合わせて運営することが重要です。運営者がぶれない本質的な理解を持つことで社会的に意義のある活動になるのだと感じています。つまり、本質を大切にし、地域の状況に合わせることを常に意識し続けること、研修に参加していただいた方々を大切にし、継続的にネットワーク化を図ることが求められます。さらに、認知症カフェがその地域全体を変えていくことを示し続けることが、地域にとって欠かせない存在として認識していただくことにつながるのだと思います。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
オランダのアルツハイマーカフェで使用しているモデレーター研修のカリキュラムを日本版に援用するプロセスには苦労しました。何度もオランダに足を運び、アルツハイマー協会との関係を構築し、必要な手続きを踏む中で、多くの支援者に出会いました。また、オランダ王国大使館の理解を得ることができた背景には、こうしたプロセスが影響しているのだと思います。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
研修の質を担保するために受講人数を20名程度に制限していますが、毎回多くの希望者からお申し込みをいただきます。研修修了者のネットワークがあり、修了後も情報交換がなされていることは大きな励みにもなっています。こうしたネットワークが認知症カフェの継続につながるものだと信じています。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、2020年度はモデレーター研修を開催できませんでした。研修は演習が中心であり、ネットワークづくりを大切にしているため、オンライン開催に踏み出すこともできていません。
認知症カフェは、入りやすさ、気楽な雰囲気、これまでつながれなかった人同士がつながれることが重要です。誰も取り残さないことを大切にしており、オンライン開催にすることで取り残されてしまう人を作ってしまうという現状に葛藤を感じます。
〈今後のビジョン〉
誰も取り残さない認知症カフェを普及・継続させるために、認知症カフェの本質や価値、意味を大切にし、その地域に合った認知症カフェの運営・演出を行える人材を育成していきます。この研修が継続することで、認知症カフェが継続し、ひいては「認知症になっても安心して暮らせる地域」「認知症に偏見のない地域」に近づくことができるのだと考えています。
■事業名:認知症カフェモデレーター研修
■事業者名:認知症介護研究・研修仙台センター(社会福祉法人東北福祉会)
■取材協力者名:矢吹 知之(認知症介護研究・研修仙台センター研修部長)
■事業所住所:〒989-3201 宮城県仙台市青葉区国見ケ丘6-149-1