〈コンセプト・特色〉
「押し付けない介護予防」をコンセプトに、住み慣れた地域で楽しく安心して暮らせる環境をつくることで、健康寿命の延伸につなげる取り組み
〈取り組みの概要〉
住み慣れた地域で楽しく安心して暮らせる環境づくりとして、以下の3つの取り組みを行っています。
①コミュニティづくり
コミュニティ喫茶「元気スタンド・ぷリズム」には、誰でも、いつでも、気軽に立ち寄ることができ、地域での知り合いをつくることができたり、気軽に相談したりすることができます。外出をうながし、地域の方同士の支え合いを通じ、新たな交流のきっかけをつくります。
②生活安心づくり
・地元の医師会と連携し、「暮らしの保健室」を開催し、看護師さんなどに気軽に相談したり、速やかに医療や介護につないだりすることができるようにしています
・身体機能の低下などにより日常生活の困りごとがあったときに、地域の方が支えてくれる仕組みである、地域支えあい事業「幸せ手伝い隊」を運営しています
・惣菜、弁当店「元気スタンド・ぷライス」を、コミュニティ喫茶「元気スタンド・ぷリズム」の隣で運営し、食生活のサポートとして配食や見守りを行っています
・足腰に不安があり移動が困難な方でも、自由に外出ができるようにハンドル付き電動車いすを時間で貸し出しています(レンタルセニアカー)。充電などのメンテナンスを自分で行わずに気軽に借りられます
・電話回線や工事など不要で簡単に設置できる在宅見守りシステム「在宅安心君」のレンタルと、見守り役を、コミュニティ喫茶で管理しています。地元のネットワークで異変をチェックすることができます
③生きがいづくり
何歳になっても生きがいや楽しみをもって活躍できる環境として、
・地域支えあい事業「幸せ手伝い隊」のサポーターとして他人をお手伝い
・惣菜、弁当店「元気スタンド・ぷライス」の有償ボランティアスタッフとして、何歳になっても、闘病中であっても、最期まで活躍
を整えています。
上記の活動を、シャッター商店街と化してしまった団地内商店街内の複数店舗を利用して実施しています。さらに世代間交流を含めたコミュニティモールとしての活用を進めています。
〈運営主体について〉
・元気スタンド・ぷリズム合同会社(コミュニティ喫茶「元気スタンド・ぷリズム」運営)
・NPO元気スタンド(惣菜、弁当店「元気スタンド・ぷライス」、「レンタルセニアカー」運営)
・栄商店会(地域支えあい事業「幸せ手伝い隊」受託)
〈取り組みをスタートした時期〉
2007年12月16日
〈取り組みをスタートしたきっかけ〉
高度成長期を支え、家庭よりも仕事をがんばってきた方が多い団塊世代の多くが定年退職を迎え、地元での交流が少ない方は孤立してしまうと心配された「2007年問題」。実際に前職であるスーパー勤めの頃、行き場のない高齢者から実態を聞きました。さらにそれが、サラリーマンとして転々と転勤による引っ越しを重ね、居住地周辺に誰も知り合いがいなかった自分と重なりました。
社会的孤立は、生きがいの喪失、ひきこもり、体力の低下、食事量(栄養)の低下などをもたらし、結果として病気や要介護のリスクを高めることになります。地域とのつながりをつくり、生きがいや楽しみをつくり、同時に安心して住み慣れた地域で暮らすことで、今までのコミュニティを維持したり、新たなコミュニティを気軽につくったりすることができれば、健康寿命を延伸させることにつながるのではないかと考え、取り組みをスタートさせました。
〈運営コスト〉
カフェなどでお客様に飲食していただいた売上が、運営資金です。開業11年目にしてようやく店舗貸主より家賃の引き下げをしてもらうことができましたが、惣菜店は、まだ高齢者支援施設として認めてもらえず定価の家賃を支払っています。
惣菜店やレンタルセニアカー事業など立ち上げのときに補助金を活用することができましたが、運営の補助金などは一切ありません。惣菜店のスタッフは、有償ボランティアとして協力していただいているので、運営が維持できています。
また、新たなサービスと資金源として、見守りシステムの貸し出し事業を開始しました。
〈運営に必要な費用概算〉
約23万2,000円/月
〈運営資金の確保〉
自費
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
従業員への給与は払っていますが、運営主の給与は残念ながらいまだに満足に払えていません。合同会社として運営しているため、赤字でも法人税が発生し、危機がありましたが、支払いを遅らせられるものは遅らせるなどしたり、親族より資金を借りたりして乗り越えました。
また、法人としての運営では、厚生年金への加入を勧められますが、経費がかかり加入できる状況ではありません(現在給与0なので、個人年金の加入になっているが支払えていない)。介護予防を促すことによって社会保障費を抑制しようと取り組んだら、社会保障費を払えと催促され、つぶされそうになっている現状です。
前述しましたが、11年目にしてようやく居場所としての活用として認められ、コミュニティカフェのほうだけ家賃が引き下げられました(惣菜店は、値上げです)。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
利用者の方々から日々、「ここがあってよかった」というお言葉をいただくことです。また、生活に伴走することができるのでニーズの把握がしやすく、環境整備を進めていくうえで重要な役割を果たすことができると実感しています。
「ピンピンコロリ」を希望する人が多い中、当店の利用者は、ほとんどの方が最期まで自分らしく暮らし旅立っていかれます。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
・自分の給与の支払い
・惣菜、弁当店の方の有償ボランティアの協力金の引き上げをしたい
・惣菜店を高齢者支援施設として認めてもらい、家賃の引き下げをしてもらいたい
・地域支えあい事業「幸せ手伝い隊」のサポーターを増やしたいが、市の広報の協力が難しい
〈持続させるための仕組み、工夫〉
基本的な運営資金は、カフェとしての飲食の売り上げなので、以下のような工夫をしています。
・ロスを出さないように食材の種類を絞り、逆にメニューは増やす
・大袋を利用せず、小分けのもので無駄をなくす
・利用者さんのニーズをくんで、安心して楽しく過ごせるお手伝いを率先して行う
・新規の利用者さんを増やすために、店頭での声かけを行う
そして、来ていただいた方に対しては、何よりも笑顔で接客しています。当たり前ですが、これが一番大事です。
〈今後のビジョン〉
高齢者支援だけではなく、多世代が交流することにより、社会全体として共生社会の実現を目指すために、子どもと親のための居場所であるコミュニティカフェ「元気スタンド・プレイす」を設立して世代間交流を促し、子育ては「一人でなく地域で行う」という環境をつくることです。
また、一人暮らしの高齢者が施設に入居し、それまでのコミュニティから分断されないよう、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられる環境として、生活を支える店舗をつくることです。
①洗濯代行サービス付き見守りお風呂(高齢者、障碍者の就労、お風呂での見守り)
②機能訓練型介護スナック付きカジノ(マシントレーニングをするとカジノで遊べるチップがもらえる。とろみ付きのお酒や介護食のおつまみが楽しめるスナックもある)
③幸せ手作り工房(モノづくりをテーマにした居場所。廃材や不用品を集め、リメイクして販売する)
他にも、
・見どころマップを作成し、地元で気軽に行って楽しめる場所を紹介することにより、外出を促すツールにする
・ハンドル付き電動車いすに電飾を付け、複数台でパレードを行う(足の悪い人の乗り物ではなく、すてきな、楽しい、乗ってみたい憧れの乗り物としてのイメージをつくる)。
■事業名:コミュニティ喫茶「元気スタンド・ぷリズム」
■事業者名:元気スタンド・ぷリズム合同会社
■取材協力者名:小泉圭司(元気スタンド・ぷリズム合同会社代表社員)
■事業所住所:〒340-0154 埼玉県幸手市栄3-2-106