〈コンセプト〉
2025年の高齢化社会で、地域と生活をささえる介護集団になること
〈特色〉
「認知症・共生ケア+認知症予防ケア+地域ケア」の3本のケアを地域で実践しています。それぞれのデイのコンセプトとしては、「古民家デイ」「お買い物デイ」「駄菓子屋付くらしの共生デイ」として、生活と社会参加をテーマに運営しています。特に、認知症ケアに力を入れており、地域で認知症ケアが必要な方の多くは、弊社への相談がまずなされるケースが多いです。また、若年性や障がい、精神疾患、ひきこもり等の相談も多いです。
地域活動に関しては、RUN伴参加、学校や地域での認知症サポーター養成、ケアニンの上映会、みまもりあいアプリを使った捜索活動、認知症紙芝居読者の育成、地域シニア向け講座、学校や幼稚園、自治会での認知症講座等多数の活動を行っています。
子ども連れでデイで働けたり、犬も連れて来れたり、認知症の人がデイで働いたり、高齢者が草刈りボランティアをしたり、地域の方が気軽に寄れたり、と多様性のあるあり方を大切にしています。「多様性を受け入れる=共生社会のポイント」かと思っています。
〈法人概要〉
埼玉県上尾市で2011年に起業し、独立しました。和が家グループの代表として、直井が運営しており、スタッフは30数名在籍しています。デイサービスを4施設立上げ、今は3事業運営しています(1施設は、職員に譲渡済)。事業エリアは、埼玉県上尾市、蓮田市、伊奈町、白岡市等です。株式会社と一般社団法人の両方の名刺を持って、活動しています。
〈事業〉
介護保険事業(デイ)+保険外事業(地域予防講座、研修、資格講師)
〈運営コスト〉
デイの場合、施設のリノベ費用や車輛費の人材採用の先行投資と毎月の人件費等、が主な運営コストです。設備面の先行投資に関しては、古民家デイは古びた農家宅を大規模リノベーションし、駄菓子屋デイは中古の物件を買い取り、リノベーション工事を行いました。お買い物デイは、ショッピングモールの空きスペースを間借りし、内部を改装したことによるコストが発生しました。
〈やりがい、モチベーション〉
「自分が住む地域のために、自分に何ができるか」「目の前の高齢者等当事者のために、何ができるか」「当事者のご家族のために、何ができるのか」を考え、実践することが大きなモチベーションです。
ただ、一番は、目の前の利用者の笑顔、そしてご本人が生き甲斐をもって生きている姿を見られることが大きなやりがいかな。認知症の方のご相談が多いので、認知症の方が自分を取り戻し、在宅生活を続けることができているのも非常に嬉しいです。また、地域支援もしているので、地域の方にも役立っていると感じた瞬間もやはりうれしいですね。あと、一緒に働いているスタッフが同じ方向を向いてイキイキと働いている姿を見るのもうれしい限りです。スタッフのためにも、さまざまなケアが経験できる場所をつくろうと思います。
きっと、利用者、家族、地域、スタッフみんなの笑顔とそれらの課題をいかに解決していくかが、大きなやりがいなんだと思います。
〈人材確保の方法や人材育成の仕組み〉
埼玉の片田舎の中で、理念や理想にあう人材と出会うのは非常に難易度が高いです。HPでは、「自社の理念に合う方と一緒に働きたい、面談は最初からしません。価値観のすり合わせです」と書いているのですが、結構ハードルが高いみたいで(笑)。みんな、おそるおそる電話をかけてきます。
特に介護職経験者の問合せが多い中で、今までの介護施設での価値観を変えていくのに時間がかかります。「見学⇒体験⇒面談」と進めますが、この間に、既存のスタッフが一緒に働きたい仲間になれそうかを判断していきますが、これがなかなかいない(笑)。でも、ケアマネ経験者でも、介護福祉士でも、やはり僕たちの価値観に共感して実現したいと思ってくれる方でないとやはり採用はできません。だから、いつも人材不足状態にはあります(笑)。ただし、和が家グループの噂を聞きつけて入社してくれる方も、ここ3年位は出てきており、その方たちの定着率は非常に高いです。
人材育成の過程の中で、ママさんスタッフが多いので、なかなか夜の研修などもスタッフが揃いづらい実態もあるのですが、スタッフのグループラインに「学び」となる内容を毎週送ったり、必要な資格や講座の案内や費用支援をしたり、各事業所の取組をLINEで送り合ったりなどして、グループとしての理念の共感性を高めています。
〈失敗経験、苦労していること〉
介護経験が少ない中で起業しているので、最初は、実務上、苦労しました。わからない事も多くて。ただ、介護を知っているだけでは、高齢者って元気にならないんだなとも感じました。それから、介護人材の女性スタッフの衝突がたびたび起こります。これがまた苦労します(苦笑)。ちなみに女性同士が衝突し、居宅を1回閉じざるを得ない経験もしています(笑)。だから、スタッフとの対話時間に多く時間を使うようにしています。
また、管理者になりたい人材がなかなかおらず、実質、自分がすべての管理者でもあり、認知症ケアのソーシャルワーカーでもあり、総務会計部長でもあり、地域ケア担当でもあり、何役もこなしているので非常に多忙です。失敗というか、事業を拡大している中でなかなか最適な人材と会えない悩み、苦労はあります。
〈課題や、これまでの解決の工夫〉
やはり理念を理解する人材の獲得と教育が課題です。介護事業は人が命ですから、認知症の方の自立支援や共生、社会参加といっても、それを実践できる人材に教育していくのに時間がかかります。やはり、ママさんスタッフさんも多いですし、時間にも限りがありますからね。
例えば、畑を一つやるにしても、ママさんスタッフさんで畑のやり方を知っている人はほとんどいません。それをケアの中に組み入れる中で、高齢者に聞くのももちろんですが、スタッフが全体管理をする中で、介護以外の教育にも時間はかかります(笑)。もちろん認知症ケアの教育も一筋縄ではいきません。これも時間がかかります。皆さん学んできているはずなんですが、やはり感覚で行っていることが多いので、繰り返し大切なことは伝えていけないといけませんし、実践できる人材の育成が必須です。
共生型は、スタッフの子どもも親と一緒に通える、地域の子どもが集える、自治会とも仲良い関係となり、地域福祉の共同体となる、地域の住民が自由に出入りできる、障がい者の利用もできる、若い方も利用できる、認知症の方も社会に参加できる環境づくり(例:小学校のバザーに参加等)などできることもたくさんありますが、一方、それにスタッフが慣れていかないといけません。それをスタッフに入社以前に理念を伝えておきます。「多様性のある柔軟性のあるデイ」として、スタッフが共感できること、これが大切です。
〈持続する仕組みと工夫〉
地域共生ができる仕組みは、①スタッフの導入時教育、②地域に受け入れられるか、受け入れられるために、地域との接点をいかに積極的にとっていくか、だと思います。また、何をもって共生というかによりけりですが、もし子どもたちにも来てもらえる場所にしたいのであれば、子どもたちや親たちにとってのメリットがあるかないか(駄菓子屋がある、安全な居場所になる、楽しい食堂や遊び場がある等)の「仕掛け」が必要になってきます。
〈今後のビジョン〉
事業としては、「高齢者や認知症の方が地域で自分らしく暮らせる場づくり」や「地域で認知症になっても安心できる地域づくり」が一つの大きな方向性です。地域で認知症ケアできる場が非常に少ない現状なので、認知症の方が地域や社会参加することを超えた場づくりなども見据えていきたいと思っています。
■事業名:和が家グループ デイサービス
■事業者名:和が家グループ
■取材協力者名:直井 誠(和が家グループ代表)
■事業所住所:〒362-0806 埼玉県北足立郡伊奈町小室9503(和が家の古民家デイいぶき)
■取材・まとめ:高瀬 比左子(NPO法人未来をつくるkaigoカフェ代表)
■取材時期:2012年12月