〈コンセプト・特色〉
テクノロジーを活かした未来の介護に向けた社会事業の運営
〈運営主体について〉
「社会福祉法人善光会」
運営母体となる社会福祉法人善光会は、東京都大田区にある複合福祉施設「サンタフェガーデンヒルズ」をはじめ、都内にて特別養護老人ホームや老人保健施設、認知症高齢者グループホーム、障害者入所支援など高齢者・障害者向けの福祉サービスを運営しています。
〈取り組みをスタートした時期〉
2017年10月
〈概要〉
社会福祉法人が母体となった総合研究所です。介護ロボット機器やシステムを結ぶプラットフォームである「SCOP」や、介護ロボット機器を効率的に使って介護の質と生産性の向上を図れる人材育成事業「スマート介護士資格」をはじめ、福祉サービスを展開する事業者や介護ロボット機器を開発するメーカーへのリサーチ&コンサルティング事業、関連省庁への調査・研究支援などを行っています。
〈取り組みのきっかけ〉
社会福祉法人善光会では、もともと、テクノロジーを活かした福祉サービスに取り組んでいました。2009年頃からは積極的に介護ロボット機器の導入をはじめ、介護ロボット機器の創成期より、法人理念である「オペレーションの模範となる」「業界の行く末を担う先導者」を形にすべく、介護ロボット機器を業務オペレーションに活かすために現場でのテストや改善を重ねてきました。そうして培ってきたノウハウをもとに、広く福祉業界を通して社会へ貢献できるよう現在の「サンタフェ総合研究所」として事業を行っています。
〈運営コスト〉
事業として持続可能性が確保できるよう公的な研究開発の枠組みを活用しています。介護ロボットプラットフォーム「SCOP」は、AMED(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構) の平成30年度 「ロボット介護機器開発・標準化事業(開発補助事業)」での採択をもとにした開発を行っています。
〈運営資金の確保〉
自費、寄付、介護保険、その他の公的補助
〈持続させるための仕組みや工夫など〉
メンバー同士のフランクなコミュニケーションや、今後に向けたブレーンストーミングのようなアイデアなどの意見交換の機会が多く、またそれをメンバーが大切にしていると感じることが多々あります。また、当事業のみならず、NPO法人や、別の事業を運営しているメンバーもいます。未来の介護へ挑むという高い志をもったメンバーですので、その気持ちを活かし、自由に伸び伸びと自分らしさを活かせる働き方をできるよう、各メンバーの意向を尊重しています。
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
開発においては、想定通りに事が運ばないことも多々あり、常にトライアンドエラーの繰り返しです。介護ロボット機器とシステムの連携においては、機器ごとに通信仕様が異なっているなど、さまざまなハードルがありました。こうした壁を乗り越えることができ、現在の形ができたのは、目指すべき形を各メーカーの皆様と議論し、何よりも利用者の課題解決のために、機器がどのような役割を果たせるのか、そして連携することで何が実現できるのかという、社会課題解決からの視点で開発を進め、心を一つにして進んできたからであると感じています。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
SCOPにて展開している介護記録アプリケーション「SCOP Home」は、リリースから一年足らずですが、すでに大変多くの施設でご利用いただいています。こちらのアプリケーションは自法人が運営する施設の介護職員や専門職と議論を重ねて、現場が本当に求めるアプリケーションを提供する思いが形になりました。だからこそ、多くの介護現場の皆様から、選んでいただけていることは何よりの喜びです。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
介護ロボット機器はまだまだ普及しているとはいえないのが実状です。日本はICTの活用が遅れていると叫ばれていますが、福祉業界はさらに遅れていると実感せざるを得ない部分があります。また、実際に介護ロボット機器を導入しても使いこなせず、倉庫にしまっていたりするケースも多くあります。こうした実状に対して、なかなか社会的なブレークスルーが起きにくい状況が続いていますが、私たちは「スマート介護士」資格を通して、利活用のノウハウを学び、職員として現場を変革できる人材の育成に挑んでいます。まだまだスタートしたばかりの事業ですが、より広く貢献できるよう取り組んでいます。
〈今後のビジョン〉
福祉サービスの果たす役割は、多種多様な個性をお持ちのお一人おひとりに対して、健康で充実した暮らしを最期まで送れるよう、その方の想いを尊重した支援をすることにあると思います。現在は、AIを用いた研究開発も本格化しており、ビッグデータに裏付けられた科学的介護の実践もそう遠い未来の話ではないように思います。科学は、一つの答えを導き出そうとするかもしれませんが、テクノロジーを活用するからこそ、尋常一様ではなく多種多様な福祉サービスができるような未来を目指すべきです。豊かな未来に向けさまざまなサービスに今後も挑んでいきます。
■事業名:サンタフェ総合研究所
■事業者名:社会福祉法人善光会
■取材協力者名:遠藤 丈文(社会福祉法人善光会)
■事業所住所:〒144-0033 東京都大田区東糀谷6-4-17
■サイト:https://sfri.jp/