〈コンセプト〉
人とテクノロジーの共生による新しい介護の在り方を追求する
〈特色〉
介護福祉に関わるテクノロジーを国内外問わず積極的に導入し実証するための研究所です。介護人材の需給ギャップという社会課題を解決するために、テクノロジーを活用して「高齢者の生活の質の維持・向上」「介護職員の業務負担軽減、業務効率化」を図る介護テクノロジーの研究や開発を行っています。
〈法人概要〉
「SOMPOホールディングス株式会社」
2019年2月スタート
〈運営資金の確保〉
法人の予算とプロジェクトの予算(共同開発先からの費用等)
〈やりがい、モチベーション〉
高齢者がテクノロジーを活用して喜んでくださるのはもちろんですが、介護職員から業務の負担が減ったとか、高齢者と向き合う時間が増えたという声を聞くのはとても嬉しいです。
〈人材確保の方法、人材育成の仕組み〉
技術者や介護ロボットの開発に携わった方や在宅の施設の職員の方など、さまざまなバックグラウンドをもつ方で構成されているので、双方向で各々の専門性を発揮し意見を出し合うことで、多角的に物事をとらえるようにしています。
私たちの仕事は、「未来の介護を創っていく仕事」だと思っています。人材確保については、テクノロジーを活用して、介護の未来を創っていこうという人が集まってくるよう、実績を積み上げていくことを大事にしています。
〈失敗経験〉
オープンから2年経ち、280程度の案件が持ち込まれました。しかしながら、安全性・現場負荷の軽減・介護品質などの観点から、現場で検証できるものは、20程度で、実装に至ったのは10程度になっています。「10/280」が多いか少ないかなんともいえませんが、数々の失敗から学んで現場で活用できるものを増やしていきたいと思います。
〈苦労していること、課題〉
高齢者の状態はさまざまであり、全員に効果を発揮する機器の開発が難しいです。また、事業者によってオペレーションが異なり、同じ機器を導入しても一定の効果が得られるとは限りません。結果として量産が難しく、介護テクノロジーの値段を下げにくいので、介護現場に導入するハードルとなっています。
また、介護テクノロジーは、歴史が浅く、実際にテクノロジーを評価する手法がさまざまです。Labでどういった評価をするのがベストなのか、評価方法を決めることは苦労しました。
〈これまでの解決方法〉
福祉用具のように、介護テクノロジーには、それぞれ目的や有効な対象者、条件(広さ、通信環境など)があります。こういったことを一つひとつ整理して、当てはまる現場に紹介することが重要だと思います。
「リショーネPlus」という製品を、はじめて介護施設に導入したとき、職員からの抵抗もありました。しかし、導入目的や対象者、広さなどがきちんと当てはまることで、ご入居者も介護職員も双方負担が減り、1週間後には円滑に活用ができていました。それぞれの現場において有効性が高いものを紹介していくことで、だんだんとテクノロジーが普及していくと思います。
〈持続する仕組み、工夫〉
組織として持続するには成果を出すこと、私たちでいえば、現場でテクノロジーを活用できる仕組みを構築していくことだと思います。また、一緒に社会課題を解決する仲間を増やしていくことも大事だと思っています。行政やメーカー、アカデミア、同業他社などと協同し、さまざまな技術ややり方を試して、より多くの事例やエビデンスを積み上げていきたいと思っています。
〈これからの事業としての方向性〉
現在、介護現場でテクノロジーを導入している事例の多くは、介護施設です。もちろん、これは大事なことですが、社会課題を解決するには、在宅にお住いの高齢者にテクノロジーを導入し、できるだけ住み慣れたご自宅で暮らしていける環境を設計していくことも重要だと思います。
また、デジタルやデータを活用して、発症の抑制や早期発見、合併症の予防など介護度が悪化しない仕組みができたらいいなと思っています。
〈Future Care Lab in Japan の立ち上げで大変だったこと〉
社内での立ち上げとはいえ、一人で立ち上げをしたので、物件の確保から研究所の設計、費用の確保、テクノロジーの開発や検証など大変なことはあげればきりがないですね。その中でも苦労したことは、研究所の理念体系づくりでした。これから事業が進み、色々な可能性が広がる中で、軸がブレないようにするため、まずはミッションステートメントをはっきりさせておく必要があると感じ、自問自答を繰り返しながら、4カ月を要してつくりました。
〈うまくいっていること、やってよかったこと〉
各々のテクノロジーが、どういう対象者に、どういう条件で使用していけばよいかがわかってきました。こういったものをまとめることで、現場への導入が進んでいくと思います。介護施設では、ベッドセンサーを7,000床、介護用入浴シャワーを10施設導入するなど、少しずつ成果が出てきています。訪問入浴の現場では、マッスルスーツを30着ほど導入し、身体的負担が軽減したという声を聞いています。
また、コロナ禍で子どもたちが学校に行くことが難しいときに、未来のkaigoカフェ代表の高瀬さんとオンラインで介護×ロボットの授業をすることができたのはうれしかったですね。介護のおもしろさや奥深さ、デジタルの可能性を少しでも感じてもらえたらと思っています。
■事業名:Future Care Lab in Japan
■事業者名:SOMPOホールディングス株式会社
■取材協力者名:片岡 眞一郎(Future Care Lab in Japan所長)、芳賀 沙織(Future Care Lab in Japan研究員)
■事業所住所:〒140-0002 東京都品川区東品川4-13-14グラスキューブ品川10階
■取材・まとめ:右近 幸絵(有料老人ホーム勤務)
■取材時期:2021年3月