〈コンセプト・特色〉
行政・企業・学校・地域の方々をつないでいき、さまざまなプロジェクトをつくり出すことで、街に居場所と安心感を生み出し、いろいろな社会課題に対して、リアル・チェンジ(現実を具体的によくしていく)を目指します。特に、街が多様性を認め合うのが当たり前になることを願って活動しています。
〈概要〉
■規模:埼玉県三郷市の市民、コミュニティ、団体、行政
*プロジェクトの内容によっては埼玉県全域
■内容:ビジョンを達成するために、4つの表現方法があります。
Ψ lua(ルア)
= ハワイ語で「仲間」。ケアのネットワーク基盤をつくるため、行政・企業・団体・個人とどんどんつながっていきます。そのつながりとそれぞれの能力などをもとに、いろいろな表現が可能になります。
(MisatoCare Meeting=交流会、SNSなどを利用したコミュニティ、ホームページ/Interview=さまざまな人に会い、インタビューをさせていただくことで、知恵と出会いとつながりが同時にできます。それを動画配信します)
Ψmogu(モグ)
= 行政・企業・学校・地域の方々などとの連携事業です。各法人・団体が実現したいことに対してプロジェクトを立ち上げ、課題にアプローチします。
(三郷市や埼玉県庁との協働プロジェクト=オリンピック・パラリンピックに向けた機運醸成事業、子どもの食育や貧困を考えるイベントなど/ヒトtoヒト・プロジェクト=企業からの寄付品を各団体に流通させる寄付事業。企業の食材を県内の子ども食堂や放課後等デイサービスの食育とマッチングしたり、企業からの美容品や日用品を、それを必要とされる方や団体等に流通させたりしています)
Ψmaturi(マツリ)
= イベントをつくり、その運営や実施段階で、いろいろな人が得意技を発揮し、それを受け取り、元気になっていくような循環を生みます。イベントというツールを使って、人と人とがつながり元気を生み出す空間をつくります。
(福祉の総合イベント=福祉☆Genki Fes/パラスポーツイベント=Misato Fire Bird Zero、ユニバーサルファッションショーなど)
Ψfält(フェルト)
= スウェーデン語で「畑」。セミナー事業です。care nationのネットワークからさまざまな方が「先生」になり、知識と経験の種を植え、参加された方の暮らしに「収穫」がもたらされるように活動します。たとえば、福祉について知っている方が増えていくことで安心感が増えていくイメージです。
(市内小学校にて「多様性」についての授業、リハビリ看護学会でのパラスポーツイベント実践報告、街を巻き込んで活動をするためのセミナーや講演など)
〈運営主体〉
「NPO法人care nation」
NPO法人care nationのコア・メンバーに行政、企業、個人の方などからマッチングの相談がきたり、こちらから提案したりして、その時々のテーマ(「社会課題アプローチ型」か「楽しみ創造型」か)に沿ったプロジェクトを立ち上げていることが多く、特定の団体等と取り組みをしている、というよりは流動的に行っています。強いて言えば、主に埼玉県庁、三郷市(市役所、社会福祉協議会、地域包括支援センターなど)、市内外のNPOなどの地域団体などです。
〈取り組みをスタートした時期〉
2015年頃から、代表個人が主に福祉関係者・行政・企業・学校・地域の方々と共に 福祉の総合フェスやファッションショーなどを開催しながら、地域に対して「福祉を身近に感じられる」ことを目的に活動してきました。その後、対外的には法人化した方が協働しやすいという意見をいただくようになり、2018年8月にNPO法人化しました。
〈取り組みのきっかけ〉
代表自身が子どもを持ったのをきっかけに、「地域は安心して暮らせる場所なのだろうか」「多様性が受け入れられる街なんだろうか」ということを考え始め、その視点から、病気や障がいや経済・教育格差など、テーマは違っても、多くの人が求めているのは「安心」なのではないかと感じるようになりました。さらに、行政・企業・学校・地域の方々や団体など、活動の目的などがほぼ同じでも、思ったほどは協働していないことを知り、それぞれをつなぐプラットフォームができたら、さらに多くのプロジェクトができるだろうなと思ったことが、活動・取り組みのきっかけです。
〈運営コスト〉
運営資金調達については、プロジェクトごとにクラウドファンディングを行うことと、行政や企業の助成金が主になっています。また、少しずつ動き出しているのは、寄付事業とスポーツイベントをマッチングすることで、「企業からの寄付品をイベントの景品とし、イベントの収益の一部を地域の団体等に寄付をする=寄付を循環する仕組み」も始めています。さらに、少しではありますが、そうして出会ったイベンターから寄付(協賛)金をいただくことも、NPOの運営資金の一部となっています。
〈運営に必要な費用概算〉
現在、事務所が勤務先と同じであることから、家賃や印刷費はNPOとしては計上していません。 その他費用については、プロジェクトによっては人件費などが発生する場合もありますが、固定費ではないので、月に幾ら、という概算はありません。
〈運営資金の確保〉
自費、寄付、自治体予算
〈これまでに苦労したことと、それをどのように乗り越えてきたか〉
苦労と同時に醍醐味は「(思いついたプロジェクトに対して)同じ風景を最初からは見られず、同じ温度に最初からはなりづらいこと」です。コア・メンバーや周辺の、いつも協力してくれる人たちはだいたいの共通認識があるのですが、新規で出会った相手様に対して、プロジェクトの目的や内容、実現ルートなどを伝える時は、いつも試行錯誤しています。
最初のうちは何をやるにも門前払いという「負け率」が高かったのですが、その原因を分析して、「話の内容」「話し方」「プロジェクトへの熱」「話を通すルート」など、「うまくいかなかった理由」を洗い出し、時には力ワザでプロジェクトを実現して(それにしても、いろいろな方の力を借りて、ですが)いくうちに、だんだんとさまざまな方が話を聴いてくださるようになり、協力者が増えていったと感じています。
〈うまくいっていること、やってよかったと思うこと〉
特に寄付事業(美容品を扱っている企業からの寄付品=美容品、日用品などを、医療・介護施設やシェルター、児童養護施設、学校、市内外の行政などを通じて、お困りの方々、または法人等の福利厚生に役立てていただいている)において、アンケートやメールで御礼が届いた時です。
自分たちの存在がハブとなり、確かに役立っていると知った時に「社会貢献をしたい企業の想いが形にできている」とNPOならではの意義を感じます。
また、「地域貢献をしたいが、どことつながり、何をしたらよいか」に悩んでいる企業や行政と、「企業や行政と何かしたいが、敷居が高そうだし何をしたらよいかわからない」と悩んでいる個人や団体をマッチングし、それぞれのニーズを調整してプロジェクトを立ち上げるお手伝いができた時(それにより、何かしらの社会貢献に役立った、楽しいものが出来上がった時)は、とてもワクワクします。
〈うまくいっていないこと、今、悩んでいること〉
コロナ禍において、考えているイベントができていないこと。また、「メンバー」の定義付けやメンバー構成(情報共有や、新しいプロジェクトの立案・運営の協力者を募る、協力してくれた方々への魅力的なリターンを提示するなど)に悩んでいて、それがまだうまくいっていません。
現在、NPO法人の事務処理をする人や、さまざまなプロジェクトが同時に進むよう、新しいリーダーを探しています。企業や行政の方々から「こういうことをしてみないか」とお話をいただいても、十分に手が回らず保留になったりお断りしたりしている状態です。アイデイアがあっても、それをする「人」が少ないことが悩みです。
〈持続させるための仕組みや工夫〉
care nationは今のところ、十分な人件費を払える団体ではないのですが、「楽しくて意味があり、できれば前例のないこと」をしたいという、ちょっと部活的な雰囲気の行動理念に集まってきてくれる人が多いので、とにかくまずはそれを突き詰めることをしています。チームとして持続させるために(新陳代謝をよくするために)、「持続を考えない」ようにしているところはあるかもしれません。特に決めているわけではありませんが、プロジェクトごとにチームを組み、終わったらいったん解散する、ということを感覚的に行っています。
〈今後のビジョン〉
■ダイバーシティプロジェクトの立ち上げ(バリアフリーアプリを作る/ダイバーシティ授業を継続する/行政・企業・学校・地域の方々と同じテーブルでダイバーシティミーティングを行い、街のハード面・ソフト面を多様性に応じたものにする取り組み、など)。
■オルタナティブスクール「森の家」をつくる。
■動物園や美術館など、市内外の人が楽しめて、文化的に意味のあるものをつくる。
ビジョン、こうありたいという姿は、「プラットフォーム」であり、いろいろな方々をつなぎ、そこに我々のアイディアも投入することで、プロジェクトをつくっていきたいと考えています。モチベーションとして、本当は「社会課題を解決」する点も大切ですが、まず自分たちが感じたこと、やりたいことが形になり、アート作品のようにプロジェクトをつくっていき、結果的にそれが誰かのためになればよいと思っています。
■事業名:NPO法人care nation(の各プロジェクト)
■事業者名:NPO法人care nation
■取材協力者名:宮田 英知(NPO法人care nation)
■事業所住所:〒341-0044 埼玉県三郷市戸ケ崎1‐224‐2