〈コンセプト〉
会社名のWAN(ワン)は、沖縄の方言で「自分」という意味があります。「自分スタイル」で利用者や家族はもちろん、職員も含めて自分らしく過ごせることを大切に考えています。
〈法人概要や特色〉
職員が約30名おり、通所介護を2事業所展開しています。そのうちの一つは、共生型生活介護を実施しています。また、居宅介護支援事業所も運営しています。
特色としては、1つ目の通所介護では生きがいや趣味活動を中心としながら、地域活動を積極的に行っています。例えば、洋裁店を営んでいた利用者に子ども用のマスクを作成してもらい、市内の小学校に寄贈する活動や、事業所の目の前にある小学校の入り口の看板が破損していたので、元大工の利用者が看板の土台をつくり、デザインが好きな利用者が模様や文字を書くなどして作成し、学校に寄贈するなどの活動を行っています。
通所介護の利用中は、過ごす中での動きの一つひとつがリハビリになると考えており、できることはしっかりやっていただくようにもしています。
また、週に1回、地域に向けたサロンを開催しています。地域包括支援センターにも協力してもらい、100歳体操の実施や事業所にあるマシンを開放し活用できるようにしています。地域貢献を目的にしているので、誰でも参加自由です。そのことをきっかけに施設に出入りしてもらい、介護事業所について知ってもらうきっかけにできればとも考えています。また、地域の小学生が放課後に事業所で宿題をすることもあります。サロンのときにはキッズボランティアとして活動してもらったりしています。
地域の人が誰でも事業所に入れる環境をつくりつつ、子どもたちには介護の仕事を身近に感じてもらうことで将来の職業選択の一つになってもらえればいいなとも考えています。共生型の生活介護では、介護保険の認定を受けていない65歳未満の方々にも利用していただき、幅広い年代が集う場所になればと思い開始しました。
最近オープンした新しい通所介護も共生型の申請をしています。こちらの通所介護では、10時~13時で昼食もある短時間のサービス提供です。利用者の身体づくりをメインに考えて要支援や要介護度が軽い方を中心としており、生活や自宅での好きなことなどを継続するために通所してもらい、フィットネスジム、エステ、食事のサービスを提供しています。
特に食事は筋肉をつけたい方、血糖値が気になる方など一人ひとりに合わせたメニューを調整しており、連携している配食サービス先と協働して対応しています。月に1回管理栄養士がモニタリングしてメニューの調整もしています。自分自身がどうしてほしいかと考えたときに、高齢者も同じではないかなと考えて対応しています。
〈やりがいを感じているところ〉
職員が生き生きと働く場所を目指しており、それは、やりたいことが実現できる場所であると考えています。職員のやりたいことは、利用者のために何かしたいと考えていることなので、それを会社としてサポートしていけることが大切だと考えています。例えば、現在、通所介護内でエステをしている職員も、介護職として入社したのですがエステに興味がありエステの学校に通うので休みを申し出ることがありました。それだったら、会社でしっかりサポートするから、学んだスキルを事業所でサービスとして活用できるようにしようと話をし、新しい通所介護の展開時に調整をしました。職員のやりたいことを会社としてサポートし、マッチできるように考えるとワクワクします。
利用者のやりたいことを叶える『夢プロジェクト』も実行中です。スタッフが利用者の「やりたい」や「できる」を引き出し、普段の生活場面やイベントへの参加を通して職員も一緒に楽しんでいます。
〈人材確保の方法、育成の仕組み〉
事業所を働きたい場所としてみてもらえるような工夫をしています。制服もオシャレにこだわり、ネイルやカラーリング、ひげなども清潔感が保てればよいとしています。障がい者の一般雇用、ひとり親家庭やLGBTの方、スポーツ選手なども働いており、個人のスタイルに合わせた働き方ができるように事業所の考え方を整理しています。職員全員を特別扱いとして、分業制など得意なことや苦手なことを考えて調整しています。
人材の確保が必要な時期には、短期集中型で徹底して考えて採用活動をしています。積極的に事業所の情報をSNSで発信しており、希望者はインターネットで情報を見ることが増えているので効果的です。取り組みを見て、楽しそうと考えて入ってくる人もいますが、サービス提供中はフル回転で正直大変です。面接時にもそれを伝えていますが、見学や1日体験ではお互いを知ることはできないので、1週間の契約期間を設けて給与も支払い、経験をしてもらっていますので、定着にもつながっています。
育成に関しては、社会人としての学ぶ場への参加も大切にしています。介護に関する研修だけではなく、一般企業での研修にも参加できるようにしています。
〈運営コスト〉
一人ひとりを大事にしたいということをメインに考えており、職員が多くて給与を安くするのではなく、それぞれがプロフェッショナルの集団を目指し少数精鋭としています。リハビリ職や介護職など人員基準はありますが、一人ひとりの特性に合わせて業務を組み合わせています。また、2つの通所介護を運営していますが、運営時間をずらすことで、送迎車輛の有効活用、働く職員も長時間の通所介護の送迎後に短時間の通所介護の送迎、業務と兼務するなど体制の工夫をしています。
〈失敗経験〉
利用者の『夢プロジェクト』を行っていますが、実施できないまま体調不良でサービス終了してしまったことがあります。高齢者は少しのきっかけで状態が変わることがあります。できるだけ行動を早く起こし、動きながら修正しています。利用者の「やりたい!」ことをリスク管理も考えながらですが、前に進んでいけるような状況を考えて明日にはやろうと考え取り組んでいます。
事業運営でも危ないなと考えたら、管理職で集まってどうすればいいか、戦略を考えて実践しています。今一緒に働いている職員は最高のメンバーだと思っています。
〈課題と感じたことと解決の工夫をしたこと〉
通所介護での送迎時間の影響で勤務時間ギリギリになったことで、日々のミーティングの時間を十分にもつことが難しい状況がありました。そこで、変形労働時間制を取り入れて、1日8時間の勤務を9時間に変更し、残業もなく時間の余裕がもてるようにしたことです。そのことで、月の休日の日数も9日だったのが11日に増えました。
インカムの導入で職員間の大声を出す必要がなくなり、事業所内も落ち着いた雰囲気になりました。また、トランシーバアプリを導入したことで、送迎時の調整や集まらなくてもミーティングができるようになっています。
〈持続していく仕組みや工夫していること〉
利用者の介護度に合わせたサービスを提供していくことを考えています。事業所としての目標をしっかり打ち出すことで、利用者のやりたいこととマッチさせて充実させたサービスを提供していけるようにと考えています。
異なる特徴のデイサービスを運営していることで、選択肢が1つの法人の中で設けられていることはメリットだと考えています。
職員一人ひとりを特別扱いすることで、個人のスキルアップにつなげています。今後は、一般の方へエステや運動プログラムの実践など保険外事業の展開も考えています。
〈これからの事業所の方向性〉
安定ではなく不安定がいいなと思っています。時代が変われば人も変わる。人が変わればニーズも変わる。ニーズが変わればサービスも変わっていかなければならないと考えており、色んなことに適応できるようにしていきたいです。
「会社は職員のために。職員は会社のために」を大事にし、サービスは会社ではなく、スタッフが創っていけるように、お互いが支えあっていけるような運営をしていきたいです。
■事業名:通所介護WAN STYLE(ワンスタイル)
■事業者名:株式会社WAN STYLE
■取材協力者名:知花 朋弥(株式会社WAN STYLE代表)
■事業所住所:〒904-2174 沖縄県沖縄市与儀1-2-23
■取材・まとめ:安保 奈緒(老人保健施設勤務)
■取材時期:2021年3月